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「Cクラス世界遺産」登録 そろそろやめどきでは

「ワオ!」が減ったユネスコの世界遺産 「不登録」勧告でも逆転登録に

筒井次郎 朝日新聞記者

世界遺産2拡大ミャンマーでのバガンの日の出=2014年、森井英二郎撮影

 仁徳天皇陵などの「百舌鳥・古市古墳群」(大阪府)の世界遺産登録を決めた今年のユネスコ世界遺産委員会。アゼルバイジャンで開かれ、世界26カ国29件の世界遺産が新たに誕生した。これで計1121件となった。

 新登録の遺産には、世界的に名の知れたものもある。

 ミャンマーの「バガン」は、カンボジアのアンコール・ワット、インドネシアのボロブドゥールと並ぶ世界3大仏教遺跡の一つだ。イラクの「バビロン」は、世界史でも習ったメソポタミアの古代都市遺跡。そして、アメリカからは「フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群」として、落水荘やグッゲンハイム美術館などの名建築が登録された。

世界遺産2拡大グッゲンハイム美術館内部の中央の吹き抜け=2012年、大西若人撮影

 とはいえ、それはほんの一部。多くは初めて聞いた遺産ばかりだった。カナダの「ライティング-オン-ストーン/アイシナイピ」、ポーランドの「クシェミオンキの先史時代の縞状ひうち石採掘地」・・・・・・。その名称からはどんな遺産なのか、想像すらできない。ユネスコ世界遺産センターのホームページで新遺産が紹介されているが、写真を見ても説明を読んでも、「これぞ世界遺産」とすんなり理解できないものも多かった。

ライフワークの旅の情熱は「平熱」へ

 ライフワークとして世界52カ国の409件の世界遺産を訪ねた私だが、実はいま、その情熱は「平熱」になっている。

 私が世界遺産の旅を始めた1997年夏、世界中の世界遺産は506件だった。当時は歴史上有名な建物や雄大な自然が、比較的目立っていた。それから20年経ち、世界遺産は倍増した。だが、その多くは「聞き慣れない世界遺産」ばかりなのだ。

 「ワオ・ファクター」という言葉がある。

世界遺産2拡大アメリカの「グランドキャニオン国立公園」。訪れる誰もが驚く大峡谷だ=筆者撮影

 驚いた時に発する「Wow!」という声と、要因という意味の「factor」で、「人を感動させる要因」を意味する。例えば、エジプトのピラミッドやアメリカのグランドキャニオン国立公園。いずれも世界遺産で、実際に生で見た人は、思わず「Wow!」と発するだろう。日本でいえば、大手門をくぐった先に現れる姫路城がまさしく「Wow!」。京都の清水寺や奈良の東大寺、水に浮かぶ厳島神社も、そうであろう。

世界遺産2拡大「厳島神社」の大鳥居。ライトアップで浮かび上がった=筆者撮影

 今回、国内23件目の世界遺産となった百舌鳥・古市古墳群は、仁徳天皇陵の空撮写真が「Wow!」だ。大阪の空港に離着陸する機内から眼下に見えることもあり、都会の市街地に巨大な島のように浮かぶ鍵穴形の墳丘は、その規模をエジプトのピラミッドと比較したくなる気持ちも分かる。世界遺産センターのホームページに載った写真は、29件の新遺産の中でも際立っていた。

 古墳群の登録には「墳墓によって権力を象徴した日本列島の人々の歴史を物語る顕著な物証」という理由がある。もちろんその通りなのだが、「そこに巨大古墳が存在している」という視覚で引きつける要素は大きかったと思う。

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筆者

筒井次郎

筒井次郎(つつい・じろう) 朝日新聞記者

1993年朝日新聞社入社。京都や奈良、姫路など世界遺産のある総局や支局に赴任。現在は延暦寺(世界遺産)や彦根城(世界遺産候補)を抱える滋賀県の大津総局に勤務。寺社や遺跡、それを守る人々への取材を重ねる一方、1997年にライフワークとして始めた世界遺産めぐりは52カ国409件を訪問済み。育児休業を3度、計11カ月取得し、子育て世代の取材にも関心がある。

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