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京都の世界遺産 追加すべきか、このままでいいか

世界遺産ブランド超えた京都ブランド。宮内庁管理や漏れている寺社に価値はないのか?

筒井次郎 朝日新聞記者

「世界遺産? それ、何ですの?」時代の選考基準

 限られた期間の中で、次のような基準が設けられた。

①世界遺産が不動産に限られているため、建造物、庭園を対象に
②国内で最高ランクに位置付けられている国宝(建物)または特別名勝(庭園)を有し
③遺産の敷地が史跡に指定されているなど、遺産そのものの保護の状況が優れている。

 この3基準をあてはめ、適合したのが上記の17カ所だった。

 「東寺」「清水寺」「平等院」などは建物が国宝。金閣が戦後に放火で全焼し、その後再建された「金閣寺」、石庭が有名な「龍安寺」、境内が苔で覆われ『苔寺』とも呼ばれる「西芳寺」などは、庭園が特別名勝だ。一方で、三十三間堂は、建物は国宝だが敷地は史跡ではない。伏見稲荷大社は国宝の建物も特別名勝の庭園もないのである。

世界遺産4拡大清水寺の国宝・本堂。紅葉の時期にライトアップされた=京都市、筆者撮影
世界遺産4拡大西芳寺の庭園は特別名勝。苔が美しく、「苔寺」と称される=京都市、筆者撮影

 しかし、世界遺産について各寺社の反応は薄かったと、当時の京都市の担当者は振り返る。今のように誰もが世界遺産を知る時代ではなかった。

 「世界遺産? それ、何ですの?」

 おおかたの寺社からは、こんな反応が返ってきたそうだ。

 そして、推薦にあたっては、この17の寺社・城で、古都京都のストーリーを説明した。

 794年に平安京が築かれた頃、建立が始まった東寺。貴族社会の舞台だった平安時代を代表する平等院。武士が台頭した鎌倉時代の様式の高山寺。室町時代に建立された禅寺の西芳寺、時の将軍の山荘に始まる金閣寺。桃山文化を代表する西本願寺。政権が江戸に移った江戸時代、将軍上洛時の宿所として建てられた二条城。この時期には社会が安定し、多くの寺社が再興され、現在に至っている。

 当時のパンフレットには、こうしたストーリーが書かれている。

世界遺産4拡大平等院の国宝・鳳凰堂。ライトアップで幻想的に浮かび上がった=京都府宇治市、筆者撮影
世界遺産4拡大西本願寺の国宝・飛雲閣。金閣、銀閣とともに京都三名閣とされる=京都市、筆者撮影

 しかし、「古都京都」は、世界遺産登録からすでに25年。自然遺産を含め、当時5件だった国内の世界遺産はいまや23件に増えた。果たして「古都京都」は、このままで良いのだろうか。私は、再考(再構成)すべき時期に来ていると考える。

世界では珍しくない追加登録

 登録に要した時間はわずか2年で、「突貫工事」の印象は否めない。

 1994年の登録の際に設けた3基準を満たす寺社も、その後現れた。

世界遺産4拡大1994年の世界遺産の登録基準は満たした石清水八幡宮=京都府八幡市、筆者撮影
 壮大な三門のある臨済宗南禅寺派大本山の「南禅寺」。臨済宗大徳寺派大本山で一休さんゆかりの「大徳寺」。そして都の南西の守護として崇敬を受けた八幡市の「石清水八幡宮」の計3カ所だ。

 世界遺産登録にかかわった元職員は「担当者レベルでは、追加登録したらええやん、という話もあった」と振り返る。「今後、追加登録の話が来た時に備え、準備はしっかりしておこうと取り組んだ」という。

 世界遺産に詳しく、イコモス国内委員会理事を務めた京都府立大の宗田好史教授は「登録10周年の2004年ごろには、追加登録の話もあった」と話す。京都市はその後も検討を続けていたようだ。

 世界遺産には、姫路城や厳島神社のような単体のものもあれば、「古都京都の文化財」や、東大寺、興福寺など八つの資産から成る「古都奈良の文化財」のように、複数の資産をまとめたものもある。

 世界各地では、拡大登録として数年後に資産を追加することは、よくある。ドイツのサンスーシ宮殿などからなる「ポツダムとベルリンの宮殿群と公園群」は、1990年に世界遺産に登録された後、92年と99年に他の宮殿や庭園が加わった。洞窟壁画で有名なスペインの「アルタミラ洞窟」は85年に単独で登録されたが、2008年に周辺の17カ所が追加され、「アルタミラ洞窟と北スペインの旧石器時代の洞窟画」と改称された。日本でも「紀伊山地の霊場と参詣道」で、登録の12年後に熊野古道の一部が追加された。

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筆者

筒井次郎

筒井次郎(つつい・じろう) 朝日新聞記者

1993年朝日新聞社入社。京都や奈良、姫路など世界遺産のある総局や支局に赴任。現在は延暦寺(世界遺産)や彦根城(世界遺産候補)を抱える滋賀県の大津総局に勤務。寺社や遺跡、それを守る人々への取材を重ねる一方、1997年にライフワークとして始めた世界遺産めぐりは52カ国409件を訪問済み。育児休業を3度、計11カ月取得し、子育て世代の取材にも関心がある。

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