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[36]「無事に年が越せる」安心をすべての人に

「年越し大人食堂」開催へ

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

お金が尽き、年末年始に「人生初の野宿」を経験する人が続出

 私はこれまで多くの「ネットカフェ難民」の相談を受けてきた。その年齢層はさまざまだが、共通しているのは、日払いや週払いの仕事をしながら、働いて得た収入からネットカフェ等の「その日の宿代」を払うという自転車操業的な生活を余儀なくさせられている人が多いという点だった。

 そのため、仕事が数日間休みになる年末年始やゴールデンウィークの時期には、お金が尽きてネットカフェにも泊まれなくなり、「人生初の野宿」を経験せざるをえない人が続出する。

 特に寒さが厳しくなる年末年始に屋外で寝ることは体力的に厳しいものがある。また、年末には帰省をして家族と正月を過ごすという慣習がある日本社会において、一人きりで路上で年を越さなければならないことがもたらす絶望感は想像に難くない。

 こうした事態を避けるため、年末年始を乗り切るためのお金を貯めている人もいるが、節約のため、ネットカフェではなく、ファストフード店で夜を過ごしていたところ、窃盗被害に遭ったという人にも会ったことがある。

公的支援は事実上、機能を停止

 生活困窮者にとって最後の頼みの綱である公的な支援は、この時期、事実上、機能を停止する。役所が閉庁している期間であったとしても、各自治体の夜間・休日窓口で生活保護の申請書を提出したり、ファクスで申請書を送付したりすることは可能だが、各自治体が独自の対策を行わない限り、期間中に宿泊の支援や一時的な生活費の貸し付けを受けることはできない。

 東京では民間によって「年越し派遣村」が行われた一年後にあたる2009年の年末から翌2010年の年始にかけて、都が国立オリンピック記念青少年総合センターの宿泊棟を借り上げて、生活困窮者への宿泊支援を実施したことがあるが、それ以降は年末年始の特別な公的支援は実施されていない。

 ホームレス支援団体の中には、この時期、各地の公園で連日の炊き出しや医療・福祉相談等、集中的な支援活動を実施しているところが多い。私の経験では、12月30日、31日と年越しが近づくにつれて、普段の炊き出しの場では見かけない顔が増えてくるという印象がある。ネットカフェ等から押し出されるように路上に出てくる人が増えていくのだ。

 だが、冒頭で紹介した発言に「おそるおそるのぞいてみました」という言葉があったように、「人生初の野宿」という事態に直面した人がホームレス支援団体に助けを求めるには、心理的なハードルを越える必要があるだろう。

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筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』(エディマン/新宿書房)、『生活保護から考える』(岩波新書)等。

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