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「マスク着用条例」 アウトかセーフか

市長が「専決」で制定。コロナ緊急事態での地方自治の在り方とは

小田博士 神奈川県大和市議会議員 元産経新聞記者

一変した街

 地域の様子は一変した。外出自粛要請に伴い、時間短縮や休業を迫られる飲食店が増え、「無期限で臨時休業します」との張り出しも目に付くようになった。大手ショッピングモールは、スーパー以外の専門店の多くが休業中だ。

 鉄道各駅の利用客も減少傾向にあるようだ。詳細なデータは把握できないが、東急電鉄によると、全線の乗降客数は大型連休機関中の5月2~6日は、対前年比で7、8割も減少したという。

拡大アルバイト従業員の感染が発覚した外食チェーン店。現在、改装工事中だ
 市内では市立病院や警察署で感染が発覚した。某外食チェーン店は、アルバイト従業員がコロナに感染したことで営業を休止し、改装工事を行うことになった。本社のホームページでは「当初より予定されていた改装工事にそのまま入ることとなった。新しい店舗として年内にオープンを予定する」と記し、風評被害の払拭を目的とした工事との見方を否定する。

 だが、覆いが被さったままの店舗は、コロナ禍のシンボルのように見えてならない。

モデルは、スペインかぜ当時のサンフランシスコ

拡大GoodStudio/shutterstock
 そんな大和市で、マスク着用条例が4月16日に公布、同日施行された。1918年のスペインかぜの際に米サンフランシスコ市が制定したマスク条例が効果を上げたことに着想を得て、大木市長が発案したという。施行のタイミングは、政府による布マスクの支給が予定されていた時期に合わせたようだ。

 条例は前文で、「思いやりの心をもってマスクを着用することが、感染症等の予防及び拡大防止を図り、思いやりあふれる社会の実現に資する」と明示する。その内容は極めてシンプルで、「市民はマスクの着用を心がけるよう努める」「市は意識の啓発等必要な施策を推進する」の2点のみである。罰則規定はなく、「理念条例」として位置づけられる。

啓発は大切。条例には重大問題

 市民の反応は賛否両論だ。「入店者にはマスクをしないで咳をする人もいる。マスク着用への理解が高まることは有難い」と評価がある一方、「入手しづらいのだから、マスクを配布することが先決だ」との批判も聞かれる。市は、マスクの作り方をホームページに掲載。5月になって、寄贈を受けたマスクを、高齢者らに配り始めた。

 マスク着用の啓発を推進すること自体に、私も異存はない。だが、この条例は、重要な問題を抱えていると考える。

 それは、①理念条例と呼ばれる市独自の政策条例を「首長の専決処分」で行ってよいのか②「マスクの感染防止効果を過大視」していないか③エチケットやマナーに属する事柄が「地方の法律」と言える条例になじむのか――の3点だ

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筆者

小田博士

小田博士(おだ・ひろし) 神奈川県大和市議会議員 元産経新聞記者

1975年1月生まれ。神奈川県大和市出身。上智大学経済学部経営学科卒業後、産経新聞社に入社。整理部を振り出しに千葉総局(県警、県政)、社会部(文部科学省、司法)、政治部(官邸、与党、野党、防衛省など)で記者生活16年。国政、地方行政、選挙や教育問題をはじめ様々なジャンルを取材した。記者の経験を活かして郷土の発展に尽くしたいと政治家に転じ、2015年4月に大和市議会議員に初当選。現在2期目(自民党)。

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