五輪関係者は入国を認め、留学生は認めないのか
2021年06月22日
コロナ禍のもと、日本に入国を希望している留学生が、国費留学生などを除いて、入国できないまま足止めされている。大使館等に連絡して対応を求めても取り合ってくれないという。留学生、研究者の渡航は決して、「不要不急」なものではないのに……。
「私の事情は『特段の事情』にあたらないのでしょうか」
早稲田大学に通う女性、ジンさんは嘆いている。日本への入国を認める「特段の事情」があるとはみなされなかったからである。
ジンさんは、もとの大学に在籍したまま一定期間留学する「交換留学」ではなく、正規の学生として早大に進学していた。当然、日本の留学ビザを持っていた。2019年から早大の交換留学制度を利用し、中国の大学に留学を果たしたが、ここで「第3国」に渡航したことにより、日本への入国がかなわない状況が現在も続いている。
早大では、少しずつ対面授業が再開してきた。早大の公式ホームページには、「新型コロナウイルス感染症の状況を慎重に見極めながら、十分な感染対策を実施したうえで、全学的に対面授業を拡大し、2021年度以降、対面授業が7割となることを目指して準備しています」との文字が躍る(注2)。
しかしながらジンさんは日本への入国がかなわず、入国が制限される1週間前に契約したマンションの家賃を半年近くも払い続けることとなった。指導教員とのやりとりもかなわない。卒業論文執筆にむけて資料を集めようにも、現地では日本語資料がほとんど手に入らない。インターネット上で手に入る論文しか、収集できない状況になっている。
埒があかず、大使館にメールにて問い合わせをしたが、取り合ってもらえなかった。以下、ジンさんが大使館に送信したメールを引用する。
私は2018年4月に早稲田大学を入学し、「留学」の在留資格で日本に滞在していましたが、2019年8月より2020年8月までの一年間、中国へ交換留学をしておりました。中国にいる間に在留カードの有効期間が満了すると承知していたため、2019年8月の出国時に入国審査官の指示に従い、(みなし)再入国許可を受けずに在留カードを返納しました。その後、新たな在留資格認定証明書を取得し、レジデンストラックの再開をお待ちしておりますが、所属している早稲田大学は昨年の秋より対面授業を再開しているため、できるだけ早く渡航したく存じます。この場合、「特段の事情」としてみなされるのでしょうか。
この問い合わせに対する、大使館の回答は、以下の通りだった。
COEを確認したところ、「特段の事情」として認められないため、査証申請を承ることができません。現在、全ての対象国・地域とのヒジネストラック及びレジデンストラックの運用は一時停止されています。両トラックによる外国人の新規入国を認ないこととしました。現在当館ではビジネストラック・レジデンストラックにかかる各種申請等は取り扱っていません。
COEとは、「在留資格認定証明書(Certificate of Eligibility)」のことを指す。日本に入国を希望する外国人または外国人を受け入れる日本の機関が、入国管理局へ必要書類を提出し、事前に、法務大臣による在留資格の認定を受けて受領する証明書とされる。
通常、COEを大使館に提出すればビザが発給されるが、現在COEは有しながら、ビザが発給されない状況が続いているのだ。
「特段の事情」にあたるのは、一体何なのか。出入国在留管理庁のホームページの資料によると、再入国許可をもたない人が入国する場合、日本に家族がいる、医療体制の充実強化に資するなど、きわめて限られたケースが挙げられているだけだ(注3)。そもそも、彼女が滞在している国は、外務省がホームページで示している上陸拒否対象地域にはあたらない(注4)。新型コロナへの感染者数の推移などをみても、日本より安全と思われる状況である。
「『特段の事情』にあたるケースかどうかを審査する、申請ができたらいいのに」
ジンさんは日本政府の対応に強く憤っている。
5月26日、東京にある日本外国特派員協会でオンライン記者会見を行ったイタリア国籍の2名の大学院生にも、個別に話を聞くことができた。
ジュリア・ルッツォさんは、奨学金を獲得しており、埼玉大学の大学院に進学予定だった。しかし、渡航禁止措置により奨学金は打ち切り
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