田中駿介(たなかしゅんすけ) 東京大学大学院総合文化研究科 国際社会科学専攻
1997年、北海道旭川市生まれ。かつて「土人部落」と呼ばれた地で中学時代を過ごし、社会問題に目覚める。高校時代、政治について考える勉強合宿を企画。専攻は政治学。慶大「小泉信三賞」、中央公論論文賞・優秀賞を受賞。twitter: @tanakashunsuk
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
五輪関係者は入国を認め、留学生は認めないのか
埒があかず、大使館にメールにて問い合わせをしたが、取り合ってもらえなかった。以下、ジンさんが大使館に送信したメールを引用する。
私は2018年4月に早稲田大学を入学し、「留学」の在留資格で日本に滞在していましたが、2019年8月より2020年8月までの一年間、中国へ交換留学をしておりました。中国にいる間に在留カードの有効期間が満了すると承知していたため、2019年8月の出国時に入国審査官の指示に従い、(みなし)再入国許可を受けずに在留カードを返納しました。その後、新たな在留資格認定証明書を取得し、レジデンストラックの再開をお待ちしておりますが、所属している早稲田大学は昨年の秋より対面授業を再開しているため、できるだけ早く渡航したく存じます。この場合、「特段の事情」としてみなされるのでしょうか。
この問い合わせに対する、大使館の回答は、以下の通りだった。
COEを確認したところ、「特段の事情」として認められないため、査証申請を承ることができません。現在、全ての対象国・地域とのヒジネストラック及びレジデンストラックの運用は一時停止されています。両トラックによる外国人の新規入国を認ないこととしました。現在当館ではビジネストラック・レジデンストラックにかかる各種申請等は取り扱っていません。
COEとは、「在留資格認定証明書(Certificate of Eligibility)」のことを指す。日本に入国を希望する外国人または外国人を受け入れる日本の機関が、入国管理局へ必要書類を提出し、事前に、法務大臣による在留資格の認定を受けて受領する証明書とされる。
通常、COEを大使館に提出すればビザが発給されるが、現在COEは有しながら、ビザが発給されない状況が続いているのだ。
「特段の事情」にあたるのは、一体何なのか。出入国在留管理庁のホームページの資料によると、再入国許可をもたない人が入国する場合、日本に家族がいる、医療体制の充実強化に資するなど、きわめて限られたケースが挙げられているだけだ(注3)。そもそも、彼女が滞在している国は、外務省がホームページで示している上陸拒否対象地域にはあたらない(注4)。新型コロナへの感染者数の推移などをみても、日本より安全と思われる状況である。
「『特段の事情』にあたるケースかどうかを審査する、申請ができたらいいのに」
ジンさんは日本政府の対応に強く憤っている。
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