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空自のF-35は中国が導入するSu-35に対抗できるか(下)――F-35導入の是非を再考すべき

清谷信一 軍事ジャーナリスト

 中国がSu-35を導入するメリットはSu-35そのものだけではない。同機に使用されているエンジン、117Sの輸入も大きなメリットだ。

 現在ロシアはSu-35輸出の条件としてライセンス生産は拒否し、また合わせてロシア製の戦闘機のコピーを止めることを要求しているという。またそれができない場合、フランカー(su-27)用のAL31Fエンジンの供給を止めるとしている。つまり飴と鞭の抱き合わせだ。

 中国は、フランカーシリーズをライセンス生産で得たノウハウを利用して、J11B(Su-27SKのコピー)やJ-15(Su-33のコピー)、J-16(Su-30MK2)などのコピーを開発し、これを自国開発機と称している。そして自国用にしろ、輸出用にしろ、ロシアへのロイヤリティもロシアの許可も必要ないと主張した(ところが中国はパキスタンなどからはロシアオリジンの兵器のライセンス生産にあたってキッチリ、ライセンス料を取っている)。

 このためロシアからの対中兵器輸出は大きく落ち込んだ。のみならず、中国は国産戦闘機J-10などにもフランカー用のAL31Fエンジンを使用している。中国は自国でもAL31Fに代わるエンジン、WS-10Aを実用化しているが、信頼性、耐久性、稼働率はロシア製のエンジンに遠く及ばない。そのロシア製エンジンも耐久性では大きく西側のエンジンに劣る。

スホーイSu-35=ユナイテッド・エアクラフト・コーポレーション提供拡大スホーイSu-35=ユナイテッド・エアクラフト・コーポレーション提供
 つまり、ロシアから戦闘機用エンジンの供給を止められた場合、中国の航空戦力は大きな打撃を受けることになる。

 117SはAL31Fをベースに開発されたが、推力が14.5トンとAL31Fの12.5トンから大幅に向上している。

 さらに360度方向で15度の可変ノズルを有しており、これがSu-35に高い機動力を与えている。オーバーホール間隔もAL31Fの500時間から、1000時間と大幅に向上しており、寿命も4000時間とこれまた大幅に伸びている。

 つまり、Su-35の稼働率はこれまでの戦闘機よりもかなり高くなる可能性がある。これは戦闘機の稼働率が低い中国にとっては福音だ。

 中国はこのエンジンを、現在開発中のステルス戦闘機、J-20に使用する可能性がある。中国は現在J-20用に新型エンジン、WS15を開発中だが、ペーパープランに過ぎない。

 J-20には暫定的にWS10Gを搭載しているが、これはAL31Fをコピーし、改良を加えたものだ。推力、信頼性とも大きく欠けており、J-20開発のネックと言われている。もし、中国がJ-20のエンジンに117Sを暫定的にでも採用すればJ-20の開発・実用化は一挙に進むだろう。これも我が国にとっては剣呑だ。

 中国のステルス技術は ・・・ログインして読む
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筆者

清谷信一

清谷信一(きよたに・しんいち) 軍事ジャーナリスト

軍事ジャーナリスト、作家。1962年生まれ。東海大学工学部卒業。03~08年まで英国の軍事誌Jane's Defence Weekly日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関、Kanwa Informtion Center上級顧問。日本ペンクラブ会員。著書に『専守防衛─日本を支配する幻想』『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『自衛隊、そして日本の非常識』『ル・オタク フランスおたく物語』、共著に『軍事を知らずして平和を語るな』『アメリカの落日―「戦争と正義」の正体』『すぐわかる国防学』など。最新刊に『国防の死角――わが国は「有事」を想定しているか』。

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