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[3]女性議員が少ないことによるさまざまな問題

男性にも生きにくさをもたらす

三浦まり 上智大学法学部教授

注)この立憲デモクラシー講座の原稿は、3月4日に早稲田大学で行われたものをベースに、講演者が加筆修正したものです。

立憲デモクラシーの会ホームページ

http://constitutionaldemocracyjapan.tumblr.com/

三浦まり(3)につく写真1拡大講演する三浦まり教授

埋もれる「身体的存在」としての私たち

 地域性の話をしてきましたが、ここから埋もれる話が一つあります。それは「身体性」ということです。

 経済利益というのは、ある程度地域特性がありますから、経済利益は地域ごとに区切られた選挙区でも、その利害は反映される傾向にあります。

 この地域は自動車産業が多いとか、この地域は原発があるとか、地域性によって経済利益はある程度反映されます。ところが私たちの身体性というのは、住んでいる地域には反映されないのです。例えば、どの地域も性別は男女半々で構成されています。

 障がいがあるとか、病気を持っているとか、介護をしているとか、そういった身体的なあり方は人それぞれで、ある特性がどこかの地域に集中することはあまりないために、埋もれてしまいます。

 イデオロギーというのはある程度政党によって表現されますから、私たちが考える望ましい社会、イデオロギーの違いは政党を選ぶことによって表出できます。特に比例代表ではそうです。また、自分の地域の代表というのは、小選挙区制によってある程度は反映することができます。

 でも、保育園に入れないというのは政党や地域では埋もれてしまいがちです。この問題は現在大きな問題になっていまね。今日の同時間に、国会前では「保育園に落ちたのは私だ」のスタンディングが起きていると思いますが、保育園に入れなかったという方が匿名でブログを書いて、それが国会にまで波及し、いま大きな問題になっています。

 この問題も身体性の問題です。子どもが保育園に入れない。そういったことは地域で限定されないわけです。もちろん待機児童問題は都市部に集中していて、保育園に入りやすい区と入りにくい区がありますが、こうした関心事は地域代表を選ぶとき、あるいはイデオロギーで政党を選ぶときには埋もれてしまいがちです。

女性議員が少ないことでの弊害

 でも、皆さんにとって身体性からくる政治的な問題は大きな関心事項ではないですか? もちろんイデオロギーも重要だし、産業とか経済利益も重要ですが、皆さんの人生の中で抱える問題からすると、保育園の問題、介護の問題、教育の問題、病気になったときの医療の問題というのは、とても大きな関心事項だろうと思います。イデオロギーによって見方が異なるというよりも、むしろどういう身体的経験をそれぞれの人がしたかということによって、気づき方が違うと思うのです。

 それが端的に表れるのは女性であったり、少子化の問題だったりするのではないかと思っています。というのは、国会では9割が男性なんですね。地方も、市町村議会の2割は女性ゼロ議会です。あるいは「女性が1人ぐらいいたほうがいい」ということで、「お一人様議会」も結構あります。女性が1割もいないような状況で、少子化に関する政策も決まっているわけです。

 ところが男性と女性では、イデオロギーや経済利益ではある程度一致したとしても、身体的経験はすごく違います。妊娠するとか、性被害にあう可能性を感じながら生活しなくてはいけないといった身体的な違いに由来する経験値の差は大きいのにもかかわらず、議会に女性が極端なまでに少ないために、ほとんど議決には反映されないのです。それでは大きな政策のゆがみをもたらすことになるのではないかと思います。

少子化問題が解決しないワケ

三浦まり(3)につく写真2拡大講演する三浦まり教授
 端的に表れているのが少子化問題です。少子化問題は、90年代の初頭に1.57ショックが走りましたが、20年以上にわたって解決されないままできました。意思決定のほとんどを男性が占めていることが、解決を遅らせてきたといえます.心のどこかで、女性がわがままで、結婚を遅らせて高齢で子どもを産もうとするからいけないのだという思いがあるために、必要な施策が遅れていくのではないでしょうか。当事者の女性が意思決定に関わっていたら、もっと早い解決が可能であったと思います。

 私たちそれぞれに異なる身体性を持っていることを前提に、代表制の中に多様性を組み込んでいかないと、偏った意思決定になってしまうのです。

 女性議員は、下院で比較すると日本は9.5パーセントで156位です。お配りしたレジュメには「190カ国中、日本は155位」と書いてありますが、最新のデータでは「156位」に落ちていました。ミャンマーが、この間の選挙で女性議員を増やして日本を抜きました。日本は世界のボトムの36カ国の一つですね。極めて低い位置にあると言えます。(注:2016年4月にランキングをさらに一つ落とし157位となった。)

 日本の水準は偏差値計算すると41でした。ずっと41程度の水準のまま20年間ぐらい日本は変わっていないんですね。

 「先進国で最低」という言い方がよくされますが、世界の中で最下位のところにあるという認識から、私たちは出発しないといけないと思います。

なくならないセクハラ

 いまの政治のあり方は男性優位の政治になっていますが、英語で言うと「Male dominance」です。「Dominance」ですから、「男性優位」とか、「男性支配」という意味です。

 男性優位の政治構造の何が問題なのでしょうか。一つは女性蔑視の政治文化が続くということです。これはいまの首相になってから、否定することはできないと思います。よく、女性に向けてやじを飛ばしていますよね。数年前にも都議会で不妊治療に対する助成について質問をした塩村文夏さんに対して、やじがありました。

 性差別やセクハラが、実は議会の中で相当起きています。東京都議会でのセクハラのやじ事件のあと、幾つかアンケートが行われ、相当数の女性議員がセクハラを経験していることが明らかになっています。2割から3割弱ぐらいの人がセクハラを受けたと報告をしています。

 これは議会での話です。職場ではないわけです。セクハラ禁止の法律を作る議会でセクハラがあるわけです。それではセクハラ禁止の立派な法律なんて、できるわけがないでしょう。議会に対して私たちは、 ・・・ログインして読む
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筆者

三浦まり

三浦まり(みうら・まり) 上智大学法学部教授

上智大学法学部教授.カリフォルニア大学バークレー校にてPh.D. (政治学)取得.東京大学社会科学研究所機関研究員を経て現職.専門は現代日本政治論,福祉国家論,ジェンダーと政治.主著に『私たちの声を議会へ:代表制民主主義の再生』(岩波書店,2015年),『日本の女性議員:どうすれば増えるのか』(編著,朝日選書,2016年),『ジェンダー・クオータ:世界の女性議員はなぜ増えたか』(共編著,明石書店,2014年),Welfare Through Work: Conservative Ideas, Partisan Dynamics, and Social Protection in Japan (Cornell University Press, 2012).

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