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米朝の行方(1)トランプに「失敗」の文字はない

ポンペオ訪朝の突然の中止で不透明感を増す米朝交渉。ワシントン特派員が先を読む

園田耕司 朝日新聞ワシントン特派員

拡大並んで歩くポンペオ米国務長官(左)と金正恩朝鮮労働党委員長=労働新聞ホームページから
「私はポンペオ氏に訪朝しないように要請した。なぜなら、現段階では、朝鮮半島の非核化に関して重要な進展が見られないからだ」

 トランプ氏は8月24日午後、立て続けに三つのツイートを投稿し、米朝交渉の米側の責任者であるポンペオ氏の訪朝中止を発表した。ポンペオ氏は前日の23日に記者会見を行い、自身の訪朝を発表したばかり。トップダウンによる突然の取り消しは極めて異例である。

 米国務省当局者によると、トランプ氏は米ホワイトハウスの国家安全保障チームと協議して決めた。別の米政府関係者によると、トランプ氏の意向はボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)の影響を受けた可能性があるという。

 ポンペオ、ボルトン両氏はほぼ同時期に更迭されたティラーソン国務長官、マクマスター大統領補佐官のそれぞれの後任として就任した。ポンペオ氏は強硬派でありながらもトランプ氏の意向を受けて交渉をまとめようとしているのに対し、ポンペオ氏を上回る最強硬派のボルトン氏は「リビア方式」を提唱するなど北朝鮮側を強く刺激する発言を繰り返しており、政権内ではお互いの意見対立がささやかれている。

 元米国務次官補代理(核不拡散担当)のマーク・フィッツパトリック英国際戦略研究所(IISS)米州エグゼクティブディレクターは筆者の取材に対し、トランプ氏の今回の決断を「北朝鮮が非核化を進めていないことに対する不満の表れ」と語った。トランプ氏はこれまで6月の米朝首脳会談を「成功」と自賛し、米朝交渉が順調に進んでいないと指摘されると、「フェイクニュース」と反発。トランプ氏は内部で側近に不満を漏らすことはあったものの、対外的には示すことはなかった。

 しかし、北朝鮮をめぐっては最近も、国際原子力機関(IAEA)が「(北朝鮮が)核開発計画を継続し、さらに発展させている」という報告書をまとめたうえ、米国の北朝鮮分析サイト「38ノース」もミサイル関連施設の解体作業が停滞している、という分析結果を発表。フィッツパトリック氏は「(トランプ氏が)対外的に問題があることを認めたことは新たな展開だ」と語る。

 ただし、トランプ氏は6月の米朝首脳会談前にも一時、首脳会談の中止を表明し、外交上の駆け引きを演じたことがある。今回も「私は彼(正恩氏)とすぐに会うことを楽しみにしている」とツイートし、北朝鮮側と協議は続ける意向を示している。トランプ氏がすぐさま昨年の「炎と怒り(fire and fury)」のような強硬姿勢に転じるとは考えにくく、米朝交渉に詳しいワシントンの外交筋は「トランプ氏による北朝鮮への警告だろう」と語る。

トランプの米朝外交はワシントンの外では評価されている


筆者

園田耕司

園田耕司(そのだ・こうじ) 朝日新聞ワシントン特派員

1976年、宮崎県生まれ。2000年、早稲田大学第一文学部卒、朝日新聞入社。福井、長野総局、西部本社報道センターを経て、2007年、政治部。総理番、平河ク・大島理森国対委員長番、与党ク・輿石東参院会長番、防衛省、外務省を担当。2015年、ハーバード大学日米関係プログラム客員研究員。2016年、政治部国会キャップとして日本の新聞メディアとして初めて「ファクトチェック」を導入。2018年、アメリカ総局。共著に「安倍政権の裏の顔『攻防 集団的自衛権』ドキュメント」(講談社)、「この国を揺るがす男 安倍晋三とは何者か」(筑摩書房)。メールアドレスはsonoda-k1@asahi.com

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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