メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

リベラルが安倍政権から学ぶべきこと

米山隆一 前新潟県知事。弁護士・医学博士

 それでは、安倍政権の政治戦略の特徴は何でしょうか。私はポイントは三つあると思います。それは、
1.極端な右派への「戦略的寛容」
2.中道左派政策の取り込み
3.中道を越えた左派への「戦略的批判」
です。

 議論の前提としてまず最初に確認すべきは、「小選挙区における勝利」は過半数、すなわち半数以上の票をとらなければならないという事実です。

図拡大
 考えてみれば当たり前なのですが、右ならば右全部+中道左をとらなければ過半数になりませんし、左ならば左全部+中道右をとらなければ過半数になりません。そして、中道右であれ中道左であれ、実はそここそが最大のボリュームゾーンに当たるのです。

 この様なことを言うと、「最近日本人は右傾化しているから、右は政策的に中道左をとらなくても過半数をとれる」という人がいるかもしれません。しかし、私は肌感覚として、日本人はけっして右傾化しておらず、むしろリベラルな価値観の方が主流になっているように思います(最近様々な「パワハラ」体質が明るみに出ているのはその証左ではないでしょうか)。従って、議論の第二の前提として、の横軸の右-左は、政策においても人口においても、ほぼ等分されていると考えていいと思います。

 では、安倍政権のとっている「極端な右派への戦略的寛容」とは何でしょうか?

 これは誰とは言いませんが、昨今話題を振りまいている「極端な右派的言論」を繰り返す国会議員や識者の主張を正面からは認めないけれど、だからといって声高に非難もしないことです。

 このような安倍政権の態度は、そうしたいからそうしているのか、戦略的にそうしているのかは不明ですし、本当に人権にもとるような言論については、ぜひ政権自らが正面切って批判していただきたいとは思います。が、しかし、いずれにせよこの態度は、純粋に政治戦略上は極めて有効な作戦だろうと思います。

「過半数」を取るために必要な戦略的寛容

 なにせ小選挙区では「過半数」を取ることが必須で、そのためには右なら右を、左なら左をとりこぼしてはいけません。右であれ左であれ、あまりに極端な主張はどうせ実現しませんし、極端な右の主張であれば、放っておいても左の人が、極端な左の主張であれば右の人が、いやというほど批判してくれます。

 そもそも、極端とはいえ、方向性としては同じ右、同じ左である以上、共感するところもあるわけですから、なにもわざわざ自分で批判する事はない。限度を超えなければ黙っていて、少なくとも離反させないということは、政治戦略上、極めて重要なことなのです。

 また、これは選挙をすると分かるのですが(私は自民党側でも野党側でも選挙をしたことがあります)、「極端な主張をする人」というのは、その信念ゆえに、それこそ中庸な常識人では想像もできないような集中力を発揮して選挙活動にいそしんでくれます。こういった方々を離反させることは、一生懸命やってくる人がいなくなるという意味でも、あるいは反動でものすごいネガティブキャンペーンをされてしまうという意味でも、プラスになりません。

 繰り返しますが、あまりにも極端な場合はさておき、そうでないなら、自分のサイドの極端な主張をする“勇敢な者”に対しては、穏当な言論で良識を示しつつ、しかしあえて強く批判しないことで、その実力をいかんなく発揮していただくことが、重要であろうと思います。

 なぜかリベラルの人は、自分の右隣り、左隣りのリベラルを叩いて存在感を示そうとする傾向があるように見えます。それは百害あって一利なし。自派の主張については、多少自分の意見と異なっていても、よほど極端でない限り、あえて自分からは批判しないという態度が、鏡像として安倍政権から学ぶべきことだろうと思います。

「中道右」の政策をリベラルはタブー視するな

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

米山隆一

米山隆一(よねやま・りゅういち) 前新潟県知事。弁護士・医学博士

1967年生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学系研究科単位取得退学 (2003年医学博士)。独立行政法人放射線医学総合研究所勤務 、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、 東京大学先端科学技術研究センター医療政策人材養成講座特任講師、最高裁判所司法修習生、医療法人社団太陽会理事長などを経て、2016年に新潟県知事選に当選。18年4月までつとめる。2012年から弁護士法人おおたか総合法律事務所代表弁護士。

米山隆一の記事

もっと見る