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「ベルサイユのばら」と日本国憲法

エンタメ を楽しみながら、日本国憲法のエッセンスを体得する(1)

内山宙 弁護士

「ベルサイユのばら」のストーリー

 「ベルサイユのばら」の舞台は、革命直前から革命期にかけてのフランスが舞台です。オーストリア王室からフランス王室に嫁いできたマリー・アントワネット。その近衛隊長で男装の麗人であるオスカル。二人の心をときめかせてしまうスウェーデン貴族のフェルゼン。この3人を中心に、激動の時代に生きた人たちが、歴史の波に翻弄されつつも、自分らしく生きる道を切り開いていくという物語です。

 オスカルは、代々将軍を輩出してきた貴族の6人姉妹の末娘として生まれますが、後継ぎが欲しかった父親によって、男として剣術などを仕込まれて育ちます。そして、女性でありながら軍人として活躍するのですが、マリー・アントワネットがお忍びで夜会に行く際にフェルゼンと出会い、後に恋をしていることに気づいてしまいます。でも、自分は軍人であり、男として生きなければならないということから、その気持ちを押し殺して辛い思いをします。

ベルサイユのばら=©池田理代子プロダクション 拡大ベルサイユのばら=©池田理代子プロダクション
 ところが、革命の兆しが見え始めると、オスカルに男として生きることを求めていた父親が、今度は見合いの話を持ってきて、女性として幸せになるようにと言ってきます(勝手な父親のようにも見えますが、父親は父親なりにオスカルの幸せを考えていたということはできます。しかし、オスカルがどうしたいかということは二の次になってしまっています)。結局、オスカルは見合いを断り、平民のアンドレと結ばれることを選びます。

 しかし、当時は身分差別があったため、貴族と平民の結婚は認められませんでした。そこで、オスカルは貴族の地位を捨てることになるのです(貴族同士の結婚には、国王の許可が必要でした。このあたりの話は、外伝でオスカルの父親の結婚話を読むと出てきます。国王よりも強い大貴族が出てくるのを防ぐ意味がありました)。

 まとめると、オスカルは、父親によって軍人・男として生きることを決められ、次には女として結婚することを求められ、最後に自分の意思で生き方を選びとっていったということになります。

日本国憲法の観点からみたオスカルの人生

 オスカルのこうした生き方を日本国憲法の観点から見ると、様々な問題が出てきます。

 まず、女性でありながら男性として生きるように求められていたということで、個人の尊厳を保障した憲法13条に反する可能性があります。また、軍人として生きることを定められていたので、憲法22条に定める職業選択の自由が侵害されていると見ることもできます。貴族と平民が結婚できないというのは、平等原則を定め、貴族制度を禁止した憲法14条に反します。親が決めた結婚相手でなければ結婚できないということになれば、二人の合意のみで結婚できることとした憲法24条にも抵触します。

 「ベルサイユのばら」の時代はみんな、こうした制約に苦しんで生きていました。この苦難をオスカルたちがどのように乗り越えていくのか、我々読者は手に汗を握ってページをめくり、ハラハラ、ドキドキし、喝采を送り感動するわけです。現代日本にいたら明らかに違憲状態に置かれたオスカルが、どのように苦難を克服するかは、ぜひ、原作を読んでみていただきたいと思います。

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筆者

内山宙

内山宙(うちやま・ひろし) 弁護士

1974年、愛知県生まれ。中央大学法学部卒、成蹊大学法科大学院修了。裁判所勤務の傍ら夜間の法科大学院に通い、2007年司法試験合格。08年弁護士登録(静岡県弁護士会)。静岡県弁護士会・憲法委員会委員、日弁連・法科大学院センター委員。エンタメ作品を題材とした憲法の講演を多数回開催している。著書に『これでわかった!超訳特定秘密保護法』(岩波書店・共著)、小説『未来ダイアリー もしも、自民党改憲草案が実現したら?』(金曜日)などがある。

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