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「選挙イヤー」に考えるネット選挙の実態と懸念

「理念なき解禁」から6年、加速するイメージ政治と停滞する選挙制度改革

西田 亮介 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授

目立つInstagramなどの非テキストSNSの活用

 現在、ネットと政治をめぐる状況が活況を呈しているとはいえない。どちらかといえば、かねてから提唱されていたことが、ひとつひとつ丁寧に検討されているといった状況だろう。昨年、自民党の小泉進次郎衆院議員らが若手のオピニオン・リーダーらと提唱した「PoliTech」が話題になった。AIなど新しい情報技術を使い、政治を革新しようというものだが、その中身はいまだに見えてこないままではある。

 そんななか、近年目立つのは、Instagramなどの非テキストSNSの活用である。いうまでもなく、Instagramはテキストではなく、画像や動画を通じたコミュニケーションを中心とするSNSだ。一般的な商品のプロモーションや観光地のPRなどでは「インスタ映え」がキーワードになるほどに、Instagramの活用は今や活況を呈しているが、選挙運動や政治活動でも、こうした非テキストSNSが盛んに活用されるようになっている。

 例えば首相官邸は2017年末からInstagramを使ったコミュニケーションに注力している。さらに、2018年の自民党総裁選で、安倍晋三、石破茂の両陣営とも活発な投稿を行ったことも記憶に新しい(投票結果への影響は定かではないが)。

より洗練された戦略と戦術が登場

首相官邸のインスタグラム 拡大首相官邸のインスタグラム
 Instagramの政治利用というと、政治を熟知した人ほど「そんな馬鹿な」と思うかも知れない。だが、大統領選挙へのロシアの介入が疑われるアメリカでも、Instagramを使った介入が指摘されているし(SNSに大量投稿しトランプ氏を支援--ロシアによる選挙干渉の実態が報告書に)、昨年の沖縄県知事選挙でも、誹謗中傷と思しき画像がネガティブ・キャンペーンとして流通した。

 若年層のユーザーや女性といった政治から縁遠い、すなわち政治の側からすると訴求しがいのある対象がInstagramユーザーには多いとされている。日本の選挙運動/政治活動/政治キャンペーンは世界のそれらや民間手法の後追いが多く、恐らく今後、もちろんそこには今年の大型選挙も含まれるわけだが、より洗練された戦略と戦術が登場すると考えてほぼ間違いない。

 ただでさえ、政治優位のネット選挙解禁がなされている状況だけに、ジャーナリズムはこれにどのように対処するのか。それらを有権者、生活者向けに、いかに読み解いていけるかが問われている。

広がる「イメージ政治」どう向き合うか

 筆者はこれまでの著書で、政治が理性よりもイメージで駆動し、政治がその状況を積極的に活用するような状況を「イメージ政治」と呼んできた〈『情報武装する政治』(角川書店)、『メディアと自民党』(角川新書)〉。

 従来のテキストを中核に据えた、短文中心のテキストベースのコミュニケーションでも、政治は組織的な投資を行い、戦略と戦術を持ってイメージ政治を加速させてきた。テキストがハッシュタグなど明らかに従属的役割に転じているInstagram(に限らず最近のSNS)では、それはさらに進み、画像や動画の加工は当たり前になりつつある。

 加工された情報から受け手が何を読み取るかは、当然ながら受け手に委ねられている。とはいえ、古典的なメディア論の知見を引くまでもなく、情報の発信者は、同時に情報の加工者でもあり、政治的動員を図るため、情報の加工に投資し、コストを掛けるものである。それに対し、多くの場合、情報の受け手や消費者はあまりに無防備だ。政治や選挙においては、受け手たる有権者が、どんな政治情報に接触しているかアラートできるかが、今後ますます重要になってくる。

 ソーシャルメディアでの情報流通の重要性が増していくなかで、非テキストSNSを中心とするイメージ政治とどのように向き合っていくのかという問題は、情報と政治の関連を考えるにあたり、射程の長い問いとなるのではないかと筆者は考えている。

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筆者

西田 亮介

西田 亮介(にしだ・りょうすけ) 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授

1983年生まれ。慶応義塾大学卒。同大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学。博士(政策・メディア)。専門は情報社会論と公共政策。著書に『ネット選挙』(東洋経済新報社)、『メディアと自民党』(角川新書)、『マーケティング化する民主主義』(イースト新書)など。

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