階猛(しな・たけし) 衆議院議員
衆議院議員(岩手1区)、盛岡一高野球部、東大野球部で投手。勤務先の長銀が経営破たん後、企業内弁護士として活動。2007年補選で初当選、以降小選挙区で5期連続当選。総務大臣政務官、民進党政調会長、国民民主党憲法調査会長などを歴任。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
野党政治家3人の「年金抜本改革チーム」提言-未来に希望が持てる年金制度へ
公的年金の1階部分をなす基礎年金は、保険料をフルに納めた場合でも現在1人月額6万5千円程度。8月27日にようやく公表された公的年金の「財政検証結果」では、経済成長と労働供給の伸び率を6パターンに分けて予想し、それぞれにつきマクロ経済スライドを必要な期間にわたり実施。これが完了した時点で基礎年金の支給水準がどうなるかを試算している。
6パターンのうち中間的な予想である「ケースⅢ」で見ると、2047年の基礎年金はそれまでの間の物価上昇による引上げ額を除けば6万2千円に減少する。さらに問題なのは、現在の6万5千円は現役男子の手取り収入に対する比率(所得代替率)が18.2%であるのに対し、2047年の6万2千円は所得代替率が13.1%に過ぎないということだ。所得代替率の下落幅は5.1ポイントだが、率に直すと28%の減少である。
この減少率は5年前の「財政検証結果」とほぼ同じだ。その試算について、過去にこの場(『75歳からのベーシックインカム』)で「将来的に基礎年金の実質的な支給額は約3割も減少する見込みだ」と指摘した。橋本代議士はこの表現を問題視し、自身のブログで「全くあたらない」と反論している。
その論拠は、将来の年金額が現在より実質的に減少したかどうかは、それぞれの所得代替率を比較するのではなく、将来の年金額を物価上昇率で割り引いた現在価値と現在の年金額との比較によって考えるべきだということのようだ。
確かに物価が上昇した分だけ年金も増額されていれば購買力は維持され、過去の年金生活者と同程度の生活水準は維持できる。しかしながら、「携帯電話やパソコンどころか、エアコンすら無い40〜50年前と同じだけ物が買えますよ」と言われても、その年金では、現代の生活水準からかけ離れた暮らししかできない。
その時代の生活水準≒平均消費額≒平均所得であり、だからこそ政府はこれまで「平均所得に対して年金額がいくらなのか」という「所得代替率」を唯一の物差しにしてきたのではなかったか。
「年金は所得ではなく、物価の伸びに連動すれば良い」と考えるなら、それは根本的な制度思想の転換であり、専門家も交えた国民的な議論が必要だ。所得代替率が3割減ることは、年金水準の3割カットにほかならない。
このことを、橋本代議士をはじめ読者の皆さんにはご理解頂きたい。
以上の認識の下、現時点で金額的に十分とは言えず将来的には先細りする基礎年金を抜本的に改め、75歳以上のすべての国民に月額8万円の「ベーシックインカム年金」を支給する。この金額は現時点の生活扶助金額の最高額を上回る。そしてマクロ経済スライドを適用せず、現役世代の所得が向上すればそれに合わせて年金額も向上する仕組みとする。
これにより、現行制度では生活保護に依存せざるを得なかった無年金、低年金の高齢者も安心して生活できるようになる。なお、持ち家のない高齢者世帯向けには、公営住宅の整備を別途講じる必要がある。