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「桜を見る会」中止にみる安倍政権長期化のわけ

不祥事にその場しのぎ重ね歴代最長に 展望なき「危機管理政治」

藤田直央 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

小泉政権と比べれば

拡大郵政民営化を問う衆院解散による選挙を控え演説する小泉首相=2005年8月、甲府市。朝日新聞社
 先立つ最近の長期政権としては、2006年まで1980日続いた小泉政権がある。進次郎氏の父・小泉純一郎首相のスタイルは安倍首相とは違った。

 郵政民営化や靖国神社参拝など、自ら掲げた公約を国論が割れても断行。当時、首相官邸記者クラブで私が取材した政府高官は「決める政治を世論が支持して官邸主導の推進力になり、自民党や省庁を抑え込んだ」と語ったものだ。

 安倍首相が政権を担当したのは、小泉首相の次の2006~07年と、再登板した12年以降。官房長官として仕えた小泉首相の「決める政治」を引き継いだイメージがあるが、実際のところは、次から次へと起きる問題への危機管理に追われてきた。国家的な危機管理と、政権維持のための危機管理の両方だ。

 最初の首相の時は、2006年にいきなり北朝鮮が最初の核実験をした。07年には閣僚の失言や不祥事による辞任が相次ぐ中で参院選に大敗。戦後最年少の52歳で首相となった安倍氏が「戦後レジームからの脱却」を掲げながら、内外の荒波にもまれて1年で退陣していく姿も、私は首相官邸記者クラブで目の当たりにした。

 首相に再登板した2012年から今日までの7年間弱を前後半に分ければ、前半のヤマは15年の安全保障法制制定だ。戦後続いてきた憲法解釈を覆しての集団的自衛権行使の限定的容認や、それを具体化した安保法制に国論は割れ、断行したことは安倍首相の「決める政治」の象徴のように言われた。だが、これは国家的な危機管理に属する。

拡大安保法制に関し記者会見する安倍首相=2014年5月、首相官邸。朝日新聞社
 民主党政権での尖閣諸島国有化を機に中国との対立が激化する一方、北朝鮮は核・ミサイル開発をエスカレートさせていた。米国を日本防衛により確実に巻き込むには、自衛隊の役割を広げ米軍と双務性を高める安保法制が必要だと、日米同盟を重視する外務・防衛両省の主流官僚らは考えていた。

 その旗振り役として安倍首相は適任だった。中国や北朝鮮に若手の頃から厳しい姿勢を示し、集団的自衛権を行使できない憲法解釈に疑問を呈し、民主党政権は普天間問題で日米関係を弱めたと批判してきた首相は、国家的な危機管理のため安保法制を推し進めた。

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筆者

藤田直央

藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)、日独で取材した『ナショナリズムを陶冶する』(朝日新聞出版)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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