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アベノミクスの目玉・国家戦略特区の大いなる欠陥

「評価・対応」なき制度につきまとう「利権」のわな。特区制度自体を評価すべき時期に

米山隆一 前新潟県知事。弁護士・医学博士

全国展開された事業は5事業だけ

 まず、国家戦略特区を設置する根拠となる「国家戦略特別区域法」、通称「国家戦略特区法」を見てみましょう(「こちら」を参照)。2014年に施行されたこの法律は、目的を次のように記します。

(目的)
第一条 この法律は、我が国を取り巻く国際経済環境の変化その他の経済社会情勢の変化に対応して、我が国の経済社会の活力の向上及び持続的発展を図るためには、国が定めた国家戦略特別区域において、経済社会の構造改革を重点的に推進することにより、産業の国際競争力を強化するとともに、国際的な経済活動の拠点を形成することが重要であることに鑑み、国家戦略特別区域に関し、規制改革その他の施策を総合的かつ集中的に推進するために必要な事項を定め、もって国民経済の発展及び国民生活の向上に寄与することを目的とする。

 以下、理念、組織、法律の適用除外等が全41条の法律で細かく規定されています。

 ではこの法律で、規制改革の評価とそれに基づく対応については、どの様に定められているでしょうか。PDCAでおなじみの通り、「評価(Check)と対応(Action)」は計画(Plan)と実施(Do)と同様か、それ以上に大事なはずですが、これについて定める条文はたったひとつだけです。

(認定区域計画の進捗状況に関する評価)
第十二条 国家戦略特別区域会議は、内閣府令で定めるところにより、認定区域計画の進捗状況について、定期的に評価を行うとともに、その結果について、内閣総理大臣に報告しなければならない。

 この条文では、進捗状況について「定期的に評価を行う」とされていますが、どの程度の頻度で評価を行い、その結果どの程度の期間後に、どの様な評価をもって全国措置か廃止かの対応(Action)を決するかについては、何ら定められていません。上記条文内の「内閣府令」として「国家戦略特別区域法施行規則(平成26年政令第99号)」が定められていますが、ここでも定められているのは「1年に1回評価する事」だけであり、それ以上のものはありません。

 実際、国家戦略特区は、2014年から始まり現在までに各区域に335もの事業が認定されていますが、5年を経た2019年現在、特区から全国措置された事業は5事業に過ぎず(「こちら」を参照)、廃止された事業があるとは聞いていません。

 特区から全国措置された5事業について、官邸は「国家戦略特区」の大きな成果と謳(うた)っていますが、その中身は、古民家の旅館利用(養父市)、都市公園保育所(東京都)、シルバー人材の就業時間柔軟化(養父市)、農業生産法人の要件緩和(新潟市)、農業に対する信用保証(新潟市)で、後付けの批判かもしれませんが、正直言って当初から特区を用いず、普通に全国の制度としてもさしたる問題がなかったものに限られている様に思われます。

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筆者

米山隆一

米山隆一(よねやま・りゅういち) 前新潟県知事。弁護士・医学博士

1967年生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学系研究科単位取得退学 (2003年医学博士)。独立行政法人放射線医学総合研究所勤務 、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、 東京大学先端科学技術研究センター医療政策人材養成講座特任講師、最高裁判所司法修習生、医療法人社団太陽会理事長などを経て、2016年に新潟県知事選に当選。18年4月までつとめる。2012年から弁護士法人おおたか総合法律事務所代表弁護士。

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