山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在仏ジャーナリスト
元新聞社パリ支局長。1994年度のボーン上田記念国際記者賞受賞。著書に『大統領府から読むフランス300年史』『パリの福澤諭吉』『ココ・シャネルの真実』『ドゴールのいるフランス』『フランス人の不思議な頭の中』『原発大国フランスからの警告』『フランス流テロとの戦い方』など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
即位の礼で来日のサルコジ元大統領はなぜ、フランス大使館でゴーンと会ったのか
フランス国家(「政府」ではない)がカルロス・ゴーンの“奪還作戦”に乗り出したようだ。この秋、新天皇の即位式にフランス国家を代表して出席したニコラ・サルコジ元大統領が、密かに長時間、カルロス・ゴーンと面談していたことが判明。くわえて、右派政党・共和党などの主力議員を中心に「フランスでの公正な裁判を要請する」との署名運動も展開される。国家の威信を重んじるフランスの作戦は、はたして奏功するだろうか?
サルコジは10月22日に行われた新天皇陛下の「即位礼正殿の儀」に、フランス国家を代表して出席した。その折、東京・麻布のフランス大使館でカルロス・ゴーンと会ったと、11月17日発行の日曜新聞「ジュルナル・デュ・ディマンシュ」が報じた。サルコジ自ら、同紙の取材に対し、「わらわれは長時間の会話を交わした」と言明している。
サルコジはマクロン大統領の指令のもと、「フランス国家代表」の資格で新天皇の即位式に出席するため来日した。しかも、ゴーンと面談した場所はフランス大使館である。とすると、今回のサルコジの動きはフランス国家公認、背後にマクロン大統領がにいると考えるのが自然だろう。
同紙には、サルコジの出身母体である右派政党・共和党(LR)と中道右派政党・民主独立連合(UDI)などの20人以上の議員が参加した「カルロス・ゴーンは公正な裁判を受けるべきだ」との署名と、本国での裁判を要請する「呼びかけ」も同時に掲載された。署名には、LRの新総裁に選出されたばかりのクリスチャン・ジャコブ、ジェラール・ロンゲ元国防相、UDIのジャン=クリストフ・ラガルド党首ら野党の有力議員。さらに、政権党・共和国前進のアンヌ・ジェネト外交委員も名を連ねている。