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石破茂が小沢一郎と会っていたら……自民党総裁選「惨敗総括」(下)

佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

なぜ「座して死を待つ」のか

――どうでしょうか。これからも石破さんは、石破さんが信じる正論を言い続けようと考えていらっしゃるわけですか。

石破 それを言えなくなるんだったら私はこの仕事を辞めようと思います。この世の中、おもしろい仕事はいっぱいあるでしょうし。もっとも63歳になりましたから、そんなに仕事があるわけじゃないかもしれませんが。

 自分を国会議員として選んでくれる選挙区がある以上、自分の信じる志なくして選挙区に負担は負わせられないですよ。自分のためだけに国会議員を続ける意味はありません。

 次の総選挙について、私が言っているのは、「次は自民党の票だけでは危ないよ」ということです。重要なのは無党派にどう呼びかけるかで、無党派が自民党ではない方に動いたら、我々は大変なことになります。今まで、自民党の候補者であればそれだけで選ばれた、そういう環境にあった人がいるなら、本当にリスクは大きい、と思います。

――それは、言い換えれば無党派層に対する戦略ですよね。しかし、自民党に限らず、無党派層への与野党の戦略は見えないんですよね。

石破 そうかもしれませんね。私は自由民主党所属議員ですから、自民党の政権が続くように努力します。自民党はこうあるべきだと総裁選で訴えたことをこれからも言い続けるし、それでも話に来てくれという候補者がいれば、応援に行きたいと思っています。

 他の勢力ともきちんと協議をする、法律も制度もすべての人に平等になるよう心がける、そういう自民党を作る。それを国民や党員の方々に訴え、同志とともに活動していく。それは私の仕事じゃないですか。

拡大自民党総裁選討論会の冒頭、ボードを掲げて発言する石破茂元幹事長=2020年9月12日、東京都千代田区

――そうですね。

石破 そして、むしろ野党の方がきちんとした選挙の体制を作り、政権構想を打ち出すべきじゃないんですか。政権交代可能な二大政党制というものを一度は実現したわけだから、前回政権を担当した時の失敗を踏まえた上で、国民に支持を訴えるべきではないんですか。

 よく「石破さんが来てくれれば」とか戯言のように言う人がいるけれども、そんなものに頼るようではだめなんですよ。そもそも私は、「自民党を変えてくれ」という少なからぬ自民党員の方々の声に応えなければならないんです。

――しかし、今の体制が続けば自民党は変わらないでしょう。あの安倍さんだってもう一回やりたいようなニュアンスのことを漂わせているじゃないですか。そうすると、この体制が続く。あるいは第二の菅、第三の菅という人が出てくる可能性もありますよね。

石破 そうですか。

――すると、今と変わらない自民党がずっと続く。簡単に言ったら締め付けの非常にきついミニ全体主義みたいな体制が続くという事態になってしまうわけですよね。そうすると、政治家・石破茂にとってもまさに「座して死を待つ」というようなことにもなっちゃう可能性はあるわけですね。

石破 可能性としてはあるでしょう。でも、今でも別に私が迫害されているわけではないですからね。

――だけど、訴えるだけでは変わらないということがありますよね。何をすべきだと考えますか。

石破 訴えるだけでは変わらない、のではなくて、訴えるやり方が国民世論にまで届いていない、ということかもしれません。我々国会議員は言論の府の一員なのだから、あくまでも言論を大切にすべきです。

 国民のいまの雰囲気が「いいじゃないか、今のままでも」という感じになっているのは、政治の側の現状を訴える努力が足りないからです。

 このままいけば、20年後には人口が1500万人減ります。そういう事態に直面しているにもかかわらず、医療費の増大にも「20年後ね」という感じで受け止めている人が多いでしょう。

 首都直下型地震も南海トラフ地震も、来るかもしれない、ではない。すでに「いつ来るか」なんです。明日にでも起こったら、この国はもたないですよ。でも「そんなこと起こらないよ」と心のどこかで思ってませんか。「20年後だよ」とか「先の話さ」とか、そんなこと起こりっこないよと思っている人が圧倒的に多いんじゃないですか。

 今の問題のほとんどが構造的な問題ですから、それを変えるのは容易じゃない。でも、訴えなければ気が付く人はいない。そういうことじゃないでしょうか。

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筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。最近著に『職業政治家 小沢一郎』(朝日新聞出版)。その他の著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

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