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感染爆発に緊急事態宣言が効かないのはなぜか――心に響かぬ菅総理の言葉

次の総理に求められるのは、国民との対話を絶やさない姿勢だ

花田吉隆 元防衛大学校教授

自粛疲れの国民 政府の言を真に受けられぬ

 国民の側に、緊急事態慣れや自粛疲れがあることは否定できない。既に、新型コロナが広がり1年半だ。その間、人々はほぼ間断なく自粛を求められてきた。最早、緊急事態は「非常事態」でなく「常態」だ。今更、宣言が発出されたところで、緊張感をもってこれを受け止めるとの雰囲気はどこを見てもない。自然、人流の減り方は芳しくなく、逆にウイルスにとっては格好の条件が整えられつつある。

 政府がコロナ対応の目玉とする酒類提供の停止もここに来て綻びが目立つ。ある調査によれば、東京の飲食店の5割が自粛要請に応じていないという。これまで、色々不満はあっても、政府の要請には大半が協力してきた。それが今や、公然と自粛やぶりが行われ、町にはかつてない光景が広がる。

 背景にあるのが協力金支給の遅れだ。店の側にも支払いの都合がある。家賃や賃金を払えなければ店をたたむしかなく、当てにした協力金がいつまでも支払われなければ店を開けるしかない、もはや政府の言うことを真に受けてはいられない、という。

拡大深夜まで営業しているバー。長らく要請に従い休業していたが、協力金がなかなか入らず店を開けた。家賃負担など資金繰りの厳しさから、店主は精神的にも追い詰められたという=2021年7月

五輪開催が分かりづらさに拍車

 オリンピック開催も、政府のメッセージを分かりづらいものにした。オリンピックでお祭りムードを盛り上げておきながら、他方で、緊急事態で自粛せよといっても国民は迷うだけだ。今は非常事態だ、国民はこれまでになく気を引き締め、感染防止を徹底してもらいたい、とのメッセージに統一できれば効果は格段に上がったはずだ。

 緊急事態宣言のメッセージが国民に届かなくなったことを、政府の分科会の尾身茂会長は、危機感の共有がなされていないという。政府ばかり慌てても、国民は一向に応じない。では、どうしてこうなったか。

拡大東京五輪の開会を告げる花火が、緊急事態宣言下の東京の街を照らした=2021年7月23日、国立競技場
拡大東京五輪の金メダリストを電話で祝福する菅義偉首相=2021年7月25日、首相公邸

日本の対策は信頼関係が前提

 日本の対策は欧米と異なり、法律で強い措置を講じるのではなく、要請という緩やかな措置にとどめるところにその特徴がある。これが機能する前提は、政府と国民との間に信頼関係があることだ。信頼関係が揺らげば、政府がいくら要請しても国民はこれを受入れようとしない。

 今、この信頼関係に揺らぎがみられるのではないか。ロックダウン云々の前に、今一度政治の根本に立ち返り考えてみる必要があるのでないか。政治に求められているのは何か。

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筆者

花田吉隆

花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授

在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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