松下秀雄(まつした・ひでお) 朝日新聞山口総局長・前「論座」編集長
1964年、大阪生まれ。89年、朝日新聞社に入社。政治部で首相官邸、与党、野党、外務省、財務省などを担当し、デスクや論説委員、編集委員を経て、2020年4月から言論サイト「論座」副編集長、10月から編集長。22年9月から山口総局長。女性や若者、様々なマイノリティーの政治参加や、憲法、憲法改正国民投票などに関心をもち、取材・執筆している。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
この国に足りない「人権」を根づかせる一歩に
次の映像もご覧いただきたい。デニズさんにインタビューした映像を3分ほどに編集したものだ。
デニズさんは、こんなことも言っていた。
「何やった私? 泥棒してない。人間殺してない。痴漢じゃない。何のために私、つかまった? 私が悪いんだったら裁判して。私、刑務所に入りたい。なんでここ(入管の収容施設)に入る? 何もしないで3年も4年もつかまるのはいちばん精神的に悪い」
人を傷つけたわけでも、物を盗んだわけでもないのに、裁判を経ることもなく、自由を奪われる。期限の定めもないから、いつになったら出られるのか、さっぱりわからない。そんな状況に置かれたら、あなたは絶望せずにいられるだろうか。
デニズさんはトルコでの迫害から逃れるため、2007年に来日した。日本を選んだのは「安全で平和なよい国」だと聞いたからだ。
日本人の女性と結婚したが、入管は夫妻を引き裂き、デニズさんを4年にわたって収容した。収容の理由について、職員から「日本でオリンピックが開かれる。日本の安全のために(施設から)出さない」と聞かされたという。生きるためにめざした「安全な国」は、安全の名のもとにデニズさんの自由を奪い、閉じ込めたのである。
妻が面会に訪ねるたび、デニズさん