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iPS特許、生命を知財で覆う難しさ

尾関章

尾関章 科学ジャーナリスト

 理屈のうえでは、あらゆる臓器のもとになるiPS(人工多能性幹)細胞。そのつくり方にかかわる特許を、開発者の山中伸弥教授を擁する京都大学が日欧に続いて米国でも得た。知財競争では遅れをとることが多かった日本の科学研究も、最近はなかなかやるじゃないか、と思わせる成果ではある。

 だが、この特許は、抜け穴もいろいろありそうだ。生命現象にかかわる技術は、設計図に従って一から組み立てる機械とは違って、すっきりとは知的財産権で押さえにくいという事情がある。ただ、公的な大学が特許をもつということは、一つの企業が技術を囲い込むという事態を避けることにはなるだろう。その意味では、京大が特許をとったことよりも特許をとられずに済んだことを前向きにとらえるべきかもしれない。

 そもそも今回、米国で成立した特許は、きわどいたたかいの果実だった。このあたりの事情は、今月に出たばかりの『iPS細胞とはなにか』(朝日新聞大阪本社科学医療グループ著、講談社ブルーバックス)にくわしい。 ・・・ログインして読む
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筆者

尾関章

尾関章(おぜき・あきら) 科学ジャーナリスト

1977年、朝日新聞社に入り、ヨーロッパ総局員、科学医療部長、論説副主幹などを務めた。2013年に退職、16年3月まで2年間、北海道大学客員教授。関心領域は基礎科学とその周辺。著書に『科学をいまどう語るか――啓蒙から批評へ』(岩波現代全書)、『量子論の宿題は解けるか』(講談社ブルーバックス)、共著に『量子の新時代』(朝日新書)。1週1冊のブログ「本読みby chance」を開設中。

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