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 今年2013年は、将棋の名人制度ができて5世紀目に入る年となる。そして、将棋の歴史で大きな重要性をもつ年となるであろう。

 現在、進行中の第2回電王戦は第3戦を終えて、コンピュータ将棋がプロ棋士を2勝1敗の成績でリードしている。今回の電王戦は、コンピュータ将棋とプロ棋士の5対5のチーム戦となり、世界コンピュータ将棋選手権の上位5プログラムと日本将棋連盟の選んだプロ棋士5人が対戦する形式をとっている。

 この原稿を書いている段階では、残り2局を残しており、コンピュータ将棋で上位2プログラムとプロ8段の棋士2人が対戦する。私の予想では、コンピュータの2勝、少なくとも1勝1敗となりそうだ。トータルでは、コンピュータ将棋がこの団体戦に勝利すると思っている。仮に今回、コンピュータ将棋が勝ち越さなくとも、それは時間の問題であろう。

 それよりも、より本質的なことは、コンピュータチェスとどう違うのか、コンピュータ将棋は、どのように強くなってきたのかなどであろう。

 ご存知のように、コンピュータチェスは1997年にIBMの開発したDeep Blueが、当時人間のチェス世界チャンピオンだったガルリ・カスパロフに勝利するということで一つの決着がついた。そのときから、日本の研究者は「次は将棋」と目標を定め、コンピュータ将棋の研究を加速させていった。チェスと将棋では、あり得る盤面の数が違う。チェスが10の120乗であるのに対し、将棋は10の220乗である。これは、とった駒を張ることができるという将棋のルールに大きく起因する。ちなみに囲碁は10の360乗だ。

 Deep Blueと現在電王戦を戦っているコンピュータ将棋の背後にある技術体系では、大きく違うことが二つある。

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筆者

北野宏明

北野宏明(きたの・ひろあき) ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長

ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長兼所長。1984年国際基督教大学教養学部理学科卒業後、日本電気に入社。88年米カーネギー・メロン大学客員研究員。91年、京都大学で博士号(工学)を取得。1993年ソニーコンピュータサイエンス研究所入社、犬型ロボットAIBOなどの開発にかかわった。2008年に現職。NPO法人システム・バイオロジー研究機構会長を兼務。Computers and Thought Award (1993)、ネイチャーメンター賞中堅キャリア賞(2009)などを受賞している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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