盗撮懸念論というナンセンスな感情論に対する理性的な答えとは
2017年05月25日
WEBRONZAで杉田聡氏が4月14日と27日の2度に渡って男女共用トイレに対する「盗撮懸念論」を展開したが、男女共用トイレに対する偏見と認識不足を感じた。そこで本稿では、男女共用トイレを必要とする立場や、北欧在住という立場、介助を必要とする身障者としての著者自身の立場、技術・防犯を考える立場から、杉田氏へ反論を書かせて頂く。
まず、杉田氏の論の前提に大きな誤解がある。それは男女共用トイレの普及が、男女平等論に基づくものであるというものだ。この誤解は、現実に男女共用トイレが普及している北欧の現実(女性の権利が保護される以前から普及)を全く調べていないことから来るもので、あまりにも世界のトイレ事情に対して疎いと言わざるを得ない。
例えば私の務めるスウェーデン国立スペース物理研究所の入っている建物(大学の分校と共用)だが、トイレは全て個室で、それぞれに便座と洗面台があり、ドアは廊下や踊り場に直接繋がっている(写真はウプサラ大学の例)。いわば団地トイレの洗面部を少し広くした構造で、男性用とか女性用とかの区別はないし、個室の外に洗面台ばかりが並ぶような「男だけ・女だけ」の空間もない。そして、これらトイレのうち一個ずつだけが男性用と女性用として確保されている以外は全て男女兼用だ。学校や大学も同様で、基本が男女兼用の個室トイレであり、そのごく一部だけが男性・女性用となってる。アサガオがない不便はあるが、逆にアサガオがない事で、小用の際のエチケットが普及しており、日本の男子トイレより清潔だ。
他の公共施設でも、身障者用以外の共用トイレは多い。例えば私の住むキルナ市の中央駅にあるのは、身障者用トイレと共用個室だけだし、県立病院のトイレもことごとく共用の個室だ。ストックホルム国際空港すら、国内線では男女別の大きなトイレ(1カ所のみ)から離れた搭乗ゲート近くには、共用の個室トイレがいくつかある。そもそも汽車や山小屋などは男女共用が基本であり、新幹線のように男性用トイレがあるのが例外なのだ(効率的だから賛成はするが)。スウェーデンの汽車には男子トイレの代わりに身障者トイレがあり、JRよりよほど身障者に優しい。
第二に、身障者とトイレの関係に関する誤解がある。杉田氏を含め、多くの方が「介護を必要とする全ての身障者は身障者トイレ以外で用を足せない」と思い込んでいるのではあるまいか。これは完全な間違いだ。
例えばカテーテルを使用している人で、尿袋の開閉等が自力で出来ない場合(私もギランバレー発病後3年間がその状態だった)、身障者用のトイレでなくとも、
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