若い世代が郷土の歴史認識を共有することの大切さ
2019年08月07日
「イデオロギーよりアイデンティティー」をスローガンに、保革を越えて結束し未来を切り拓くことを沖縄の人たちに訴えた翁長雄志前沖縄県知事が急逝してから、明日の8月8日で1年になる。前知事のこの願いの実現につながる小さいが重要な動きがこのほど地元紙で報じられた。沖縄国際大学(沖国大)が2021年度の一般入試で選択科目に「琉球・沖縄史」を導入するというのだ。現在の沖縄に至る琉球・沖縄史についての理解を若い世代に求めていくことは、沖縄のアイデンティティーを確立する上で不可欠なことだからだ。
ネット上では、普天間基地は何もないところに米軍が建設したのだが、その後、人々が仕事を求めて基地の周りに集まってきたのだという言説が流布し、それを信じて疑わない若者が少なくない。人家が密集した戦前の宜野湾集落の写真を示すまでは、危険に近づいてきた人々の方こそが悪いというネット右翼の主張に彼らは完全に呪縛されていたのである。普天間基地から石を投げれば届く距離にある沖国大の学生たちが、普天間基地の成り立ちについて正しい歴史認識を持つことは、どのような未来を沖縄は目指すべきかを考える上での出発点となる。
沖国大の受験を考える若者たちは、琉球・沖縄史を学ぶ中で、2004年8月13日に同大学に米海兵隊ヘリのCH53が墜落し、キャンパスが1週間にわたって海兵隊により封鎖され、当時の渡久地学長自身が自らの大学に入ることも出来なかったことを知るだろう。そしてこの不条理の大きな原因となっているのが日米地位協定であることを学ぶであろう。
あと一つ、若者に限らず沖縄に暮らす全ての人々がしっかりと学ぶ必要があるものに、郷土沖縄の地球史・生命史がある。沖縄は東洋のガラパゴスと呼ばれるほど生物相が豊かだと言われている。なぜそうなのかを、果たしてどれだけの人々が理解しているだろうか。ここ沖縄には、明らかにそのことを理解していない人々がいる。日本政府に迎合し、辺野古・大浦湾の海の埋め立てを容認している政治家たちだ。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください