下條信輔(しもじょう・しんすけ) 認知神経科学者、カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授
カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授。認知神経科学者として日米をまたにかけて活躍する。1978年東大文学部心理学科卒、マサチューセッツ工科大学でPh.D.取得。東大教養学部助教授などを経て98年から現職。著書に『サブリミナル・インパクト』(ちくま新書)『〈意識〉とは何だろうか』(講談社現代新書)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
膨れ上がる経費、環境破壊、競技の不公平性、ナショナリズム……曲がり角の祭典
その上2020東京は、誘致がダーティだった。国内ではJOC竹田恒和会長の退任でうやむやにされたが、フランスでは電通の提携企業に贈賄の容疑が及ぶなど、国際的にはほぼクロの扱いだ。
環境破壊の問題もある。もともと五輪誘致は、土木資本主義と利権誘導の構造だ。「環境に優しい」なんて、アリバイ以外にはありえない。国立競技場は木で造るそうだが、膨大な木材はどこで伐採したのか。文教地区・風致地区・公園緑地などの法的規制を「特例」として捻じ曲げているが、明治公園・神宮あたりの森は後々どうなるのか。
経済的に冒険できず、過去の成功例にすがる。日本人特有のメンタリティだ。景気低迷の予感に焦って、60−70年代の成功神話に今頃しがみついている。性懲りもなく2回目の大阪万博まで誘致したが(2025年)、肝心の経済面ですら、長期には負の効果が疑われる。
また先進国優位・競技の不公平性などオリにもともと内在した問題が、パラでいっそう鮮明になった。しかも今後はむしろパラが主体になる。「政治正義」の御旗があるので、パラは安心して応援しやすい一面もある(本欄『パラリンピックにみる未来身体』)。だが今感じるのは、パラが無条件でもてはやされることへの薄気味悪さだ。 「薄気味悪さ」の中身はいろいろある。
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