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コロナ封じ、今は数式しかない

医学研究には時間がかかる、だから接触を減らさなくてどうする

尾関章 科学ジャーナリスト

 私たちは、もう少し数学に強くならなければならない。新型コロナウイルスとの闘いが年を越そうという今、そう思う。

 新型コロナウイルス感染症をめぐっては、世界中で臨床の医師が患者と向きあい、基礎医学の研究者が感染や免疫のしくみを探って、予防法や治療法を見つけようとしている。その結果、ワクチン開発は常識外のスピードで進み、すでに海外では接種が始まった。ただそれでも、数カ月以内にコロナ禍を封じ込められるとは到底思えない。

シャーレでなく数式

拡大光る傘をさしてソーシャルディスタンスを取り合う人たち=2020年11月26日、名古屋市港区、山本正樹撮影
 今回のコロナ禍で私が元科学記者として暗澹たる気分になったのは、後輩たちが「距離2mの効用」について記事を書きはじめたころだ。ソーシャルディスタンスが有効という話である。古巣の朝日新聞科学医療部にはウイルス学や免疫学など基礎医学に強い記者も多くいる。本当なら、新型コロナウイルス攻略の新知見を伝えたかったに違いない。だが、あの時点では、人と人とが物理的に近づかないという感染予防策くらいしか記事にできなかったのだ。おしなべて言えば2020年、医学はこのウイルスそのものを攻めあぐねたと言ってよいだろう。

 残る手だては、感染という現象を減らすことだ。虫が媒介する病気なら虫を退治すればよい。ところが新型コロナウイルスは人から人へ直接うつるから、人と人との接触機会を減らさなくてはならない。他人との間隔を空けるのも、その一つだ。それを個人の心がけにとどめず集団の次元で実現するにはどうするか。道具となるのは試験管でもシャーレでもない。ただ一つ、数式があるのみ。だから、数学に強くならなければならないのだ。

午後3時が怖い

 最近は毎日、午後2時を回ると気が重くなる。3時が怖いのだ。

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筆者

尾関章

尾関章(おぜき・あきら) 科学ジャーナリスト

1977年、朝日新聞社に入り、ヨーロッパ総局員、科学医療部長、論説副主幹などを務めた。2013年に退職、16年3月まで2年間、北海道大学客員教授。関心領域は基礎科学とその周辺。著書に『科学をいまどう語るか――啓蒙から批評へ』(岩波現代全書)、『量子論の宿題は解けるか』(講談社ブルーバックス)、共著に『量子の新時代』(朝日新書)。週1回の読書ブログ「めぐりあう書物たち」を開設中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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