「国産治療薬ゾコーバの強引な承認」と「医師会の不見識な対応」
2023年01月31日
政府は1月27日に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けを、5月8日より、現在の「新型インフルエンザ等感染症(2類相当)」から季節性インフルエンザと同じ「5類感染症」に変更することを正式決定した。
今回の決定の根拠のひとつとして、政府は「国産の治療薬が出来た」ことをあげている。厚生労働省は昨年11月22日、塩野義製薬の「ゾコーバ」を新型コロナウイルス感染症の治療薬として緊急承認した。緊急承認とは、その有効性が「推定」によって承認できる、昨年5月に新設されたばかりの制度である。ゾコーバの承認期限は1年で、追加データを求めたうえで再び審査される。しかし、この緊急承認に至る経緯には、コロナ禍という特殊性、国産初の経口薬というバイアスを勘案しても、多くの不可解な点が残されている。
塩野義製薬は制度が出来た5月にさっそく緊急承認の申請をしたが、審査前から自民党の有力議員がSNSなどで強力に後押しをしていた。しかしながら、6月と7月に開かれた厚労省の薬事・食品衛生審議会では、「有効性を示すデータが不十分」として承認は見送られた。主要評価項目であるコロナ関連の12症状の改善効果が実証されなかったからである。ところが塩野義製薬はこの審議会において、5症状(鼻閉・咽頭(いんとう)痛・せき・発熱・倦怠感)に絞って事後解析したデータを追加提出して有効性を強調した。評価項目を変えて有利な結果を探るような解析方法について、当然、委員から厳しい批判が出た。にもかかわらず、この承認見送りに対して、日本経済新聞などの一部有力メディアが公然と疑義を表明した。
塩野義製薬はその後、日本、韓国、ベトナムにおけるグローバル臨床治験の結果、作為的に選んだ上記の5症状の回復までの期間が実薬群ではプラセボ(偽薬)群よりも1日(24.3時間)だけ短くなった(約8日→約7日:実薬群167.9時間 vs.プラセボ群192.2時間)として、再申請を行った。これを受けて厚労省・医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、「有効性を有すると推定するに足る情報は得られたと判断した」と結論づけ、昨年11月の審議会で緊急承認された。
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