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東京電力の決算はウラまで読め(2)―国策が裏付けの空虚な「資産」

松浦新

松浦新 朝日新聞経済部記者

 東京電力の決算が20日に発表される。果たしてどれだけ実態を明らかにした決算をするかが注目されるところだが、これまでの決算書を眺めていると、国の原子力政策が民間企業の決算に強い影響を与えていることがわかる。失敗続きの「国策」を見直せば、損害賠償の意外な財源が捻出できる。

 8244億円――。東電が昨年3月末時点で持つ「積立金」の1つだ。その名は「使用済核燃料再処理等積立金」。昨年3月期の決算短信によると、前年度より1500億円以上増えているので、今年3月期末には1兆円に近づいていると見られる。

 これは、発電で使った核燃料からウランと、原子爆弾にも使えるプルトニウムを取り出して、再度、核燃料(MOX燃料)として利用しようという国策事業のための積立金だ。1956(昭和31)年に、国の原子力長期計画に「核燃料サイクル」として位置づけられ、研究が続けられてきた。

約60倍もの効率で燃料を使えるとされる高速増殖炉での利用を目指したが、95年のもんじゅ(福井県敦賀市)の事故などがあり、現在は効率が約1.1倍の軽水炉でMOX燃料を使う「プルサーマル計画」が主流になっている。しかし、

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