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欧州危機の構造

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

 さる2月25日に行われたイタリアの総選挙では緊縮財政を推進してきた中道左派連合が下院では僅差で勝利したものの、上院では過半数を獲得した勢力がなく、イタリア政局は再び行き詰まりの気配を見せている。多くの政治アナリストたちは不安定な連立政権が成立するか、再選挙が数カ月以内に行われるかのどちらかだと予想している。

 元コメディアンのベッペ・グリッロ率いる大衆派「五つ星運動」の下院での得票率が25.5%になるなど、緊縮財政反対のポピュリズムが盛り上がってきているのだ。

 同じ南欧のスペインでも反緊縮財政を訴える大規模なデモが相次ぎ、マドリード、バルセロナ、バレンシア、セビリアなど各地で数万人が参加したといわれている。緊縮財政に反対するポピュリズムの流れは南ヨーロッパ全体に波及する勢いを見せている。

 2010年のギリシャ危機に端を発した欧州危機は、いったんは収束したのだが、再びヨーロッパ全体に広がってきている。問題はギリシャなど特定の国の危機ではなく、ユーロ圏全体を巻き込む構造的なものだと思われるのだ。

 1999年、ユーロが欧州の共通通貨として発足して以来、ユーロ圏各国の格差は拡大している。ギリシャ、イタリア、それにフランスまでが経常収支の赤字が拡大する中で、ドイツやオランダの経常収支の黒字は拡大している。財政についても、ドイツの基礎的財政収支が安定的に推移する中で、ギリシャ、イタリア、フランスの財政収支は悪化してきているのだ。

 つまり、

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