2012年11月06日
これも前述したが、原発推進派だった双葉町長・井戸川克隆は、原発誘致を深く悔やむようになる。彼はラスト近くで、こう語る――。
「失ったものはあまりにも大きい、今後は失ったものを勝ち取るだけ、東電にまかなってもらうだけで、けっしてプラスになる話ではない、風評被害で[双葉町という]イメージも失ってしまった、若い人はもう住まない、戻らないって言っている、家系の断絶まで生んでしまった、原発は功と罪でいえば、罪のほうがもの凄く大きいと、今はそう思っている、[……]われわれは放射能にまみれ、まったく放射能にまみれていない東京の方たちが栄えたのだ」、と……。
また牛の殺処分反対を主張する双葉郡・浪江町の酪農家、吉沢正巳さんは、「この牛たちは生き証人、絶対に生かす」と奮闘しているが、やがてカメラが写すのは、避難した多くの酪農家の飼育場で餓死してミイラ化した牛たちの、無残に「変わり果てた」姿だ。
さらに、事故直後は故郷に帰りたがっていた人々も、一時帰宅して、まるで黒沢清監督のホラーに出てくるようなゴーストタウンと化した町の光景(土台だけになった自宅や、瓦礫の上にひっくり返ったまま乗っかった船などなど)を目のあたりにし、もう帰らなくていいや、とか、もう過去は過去と割り切っている、帰りたくない、帰ってもいいことない、悪くなるかも、などと、心境の変化を口にするようになる(この一時帰宅を記録する灰暗色に覆われた一連の場面は、暗澹たるロードムービーといった趣だ)……。
くり返すが、こうした一つひとつの細部に、どんな「メッセージ」よりも雄弁な原子力政策に対する舩橋の異議申し立てが、映画的な強度として宿っているのである。ちなみに本作の英語タイトルは、“Nuclear Nation”(原子力国家)だ。
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私は『フタバ~』を試写で見た直後、小型核爆弾が
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