2020年03月10日
新型コロナウイルスをめぐる文化・芸術関係の「自粛」は、2月26日(水)、安倍首相による突然の「スポーツ・文化イベントの2週間程度の自粛要請」に始まった。何と翌27日(木)からは東京国立博物館を始めとして京都、奈良、九州の国立博物館が休館になり、29日(土)からは東京国立近代美術館など「国立美術館」6館も休館になった。東京都など自治体や私立の美術館の多くもそれに従った。
このニュースを知った時に、私は大きな違和感を持った。感染病の詳しいことはよく知らないが、今回のウイルスに関して言えば、美術館・博物館で鑑賞する場合、ほかの観客とおおむね2mは離れているし、普通は話をせずに静かに見るから、「飛沫感染」は考えにくい。チケットを買う時に現金や券に触るか観覧後にカタログやグッズを見る以外はどこも触らない(そもそも、作品に触ってはいけない)。
普通に考えたら、仕事に関する場所以外で危ない「外出」は以下の順番ではないだろうか。
居酒屋、立食パーティ、カラオケ、ライブハウス、スポーツ(ジムや観戦含む)>満員電車、病院、テーマパーク>介護施設、レストラン・食堂、スーパー等店舗、学校、図書館>劇場、コンサート(着席)>映画館>美術館・博物館
こんな「外出」の危険順はどこにも書いていないし、素人の勘だが、美術館・博物館(以降は「美術館」)は、一番感染の可能性が低い「外出」ではないか。ではなぜ、総理の「要請」に応じて国立を始めとして公立や私立の美術館まで休館に応じたのだろうか。今までそれらは、ライブハウスやスポーツジムと違って感染の「クラスター」になったことはまだないはずなのに。
普通に考えると、すぐ休館できるのは美術館で働く学芸員や研究員、職員が全く困らないから。給与は通常通り払われるし、館が閉じていれば展示内容への問い合わせなど面倒な仕事がなくなってむしろラクチンだろう。日本の国公立美術館は、おおむね入場料やカタログ、グッズの収入は関係ない。それらは別枠で雑収入として計上されるため、入場者が少ないからといって翌年の予算が減らされることもない。国立館は「独立行政法人化」で入場料収入などが損益計算書に計上されるようになったが、その大半はマスコミとの共催展に頼っている。
長年展覧会の企画を担当した私から見たら、本当に困っているのは
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