2021年06月11日
〇〇さんは、大手ゼネコン勤務で年収は1000万円、配偶者は契約社員で働いており、年収は100万円。二人にはかわいい子どもがいます。
この文章を読んで、「〇〇さん」は「男性」で、「その配偶者」は「女性」というイメージが浮かぶだろうか。はたまた、その逆は思い浮かぶだろうか。
けいこさんは、大手ゼネコン勤務で年収は1000万円、旦那の太郎さんは契約社員で、毎日家で家事をしています。
という文章に違和感を覚えるだろうか。
あるいは、ご自身の娘さんがこのけいこさんの立場で、結婚したいという相手の男性に定職がないと言われたら、手放しで喜ぶだろうか、それとも「男のくせに稼ぎもろくろくないなんて、けしからん」と思うだろうか。
太郎さんは、大手ゼネコン勤務で年収は1000万円、奥さんのけいこさんは契約社員で……
もうおわかりだろう。そして、前回紹介したように、20時台に行われた首相の記者会見場に女性がほとんど姿を見せられないわけもある程度推測できるだろう。あそこで仕事をしている男性の多くには、おそらく家を守ってくれている女性がいるはずなのである(きちんと調査したわけではないので、そうでない方がいたらご容赦ください)。
この日本には、「男は稼いでなんぼ(価値がある)」という根深い価値観が染みわたっている。
どんなに男女共同参画が大事、管理職にも女性登用が必要と声高に言われようが、いざ、我が娘が、身近な人が「結婚する」という場面に遭遇したとき、その価値観が見事に露呈する。まさに「総論賛成、各論反対」の一事例である。その一つの答えとなるデータが、就業者の年収別の未婚率で示されている(グラフは、舞田敏彦「「未婚率」と年収の関係 結婚のリアルな現実」<日経woman>より)。
30代後半(35~39歳)の年収と既婚率の「不気味な『X』」と称されたこのグラフの意味するところは、男性は収入が低いほど未婚率が高い(青線の左の方)、逆に女性は収入が高い人ほど未婚率が高い(赤線の右の方)、ということである。特に青線で示された男性のデータの右肩下がり、つまり高収入男性の未婚率が低いことは顕著である。
本当の意味での男女平等とは何だろうか? そのことに気づかされる、かつ日本で育った私自身にも無意識に植え付けられている価値観に気づく出来事があった。アメリカに留学していた頃の2000年前後、つまり今から20年くらい前のことである。よくあるホームパーティに招かれたときのことだ。
次々、いろいろな人と自己紹介しあう中で、あるカップルと話をした。そのときに、女性の方が「私、弁護士、彼、主夫」と自分と隣の男性を紹介した。私は一瞬「え?」となり、次に「ああ……」と納得した。
しかし、それまで日本ではそのようなカップルに出会ったことがなかったので、「なるほど……」と思いながら、自分の中にも「男は稼いでなんぼや」という価値観があることをありありと感じていた。当の二人はあっけらかんと話しており、周りの人も特別視している風はなかった。「そういうカップルはここでは、当たり前なんだ」とそのとき思った。
日本において、私の周りにワーキングウーマンは多い。しかも専門職として博士号を取得し、その後研究者としていわゆる「バリバリ」仕事をしている人たちだ。そういう彼女たちも「結婚」という人生のターニングポイントで、先の「男は稼いでなんぼ」という価値観で戸惑い悩むことを知った。
まさに冒頭のエピソードなのである。男女が逆であればなんの問題もなく「周囲の祝福」が得られるであろう二人が「男女が逆」であるばっかりに、「これでいいのか」となってしまうのである。特に親から「そんな、ちゃんとしていない人なのに大丈夫なの?」などなどと反対を受けて、当人が困惑してしまうのである。
そういう話を幾度となく聞くたびに、「当人同士が良ければ、それで良いって周りがなればいいのにね」と思うようになった。
それでは日本では何が問題なのか、そこで男女で仕事のありなし(つまりは収入のありなし)による可能性のある組み合わせを表に示してみた。
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