西田宗千佳
2011年09月07日
実のところ筆者は、多くの人がいうほどには変わらない、と考えている。なぜならアップルという会社は、スティーブ・ジョブズが「いる間」にすでに、大きな変革を経験しているからだ。そして、その変革の中心にあり、ここ数年のアップルを実質的に経営してきたのが、新しいCEOとなるティム・クック氏である。別のいい方をすれば、アップルは数年前から「ジョブズ+クック」の会社だったのだ。
アップルといえば「デザインの良い商品」、というイメージが強いだろう。他方、もう一つ大きな、忘れてはならないポイントがある。
それは「同一の商品を大量に生産することを前提に開発する」というポリシーだ。iPhoneやiPadはもちろん、マックに至るまで、アップル製品はおどろくほど「自社内でのデザインバリエーション」が少ない。あってパネルの色違い程度で、構造や形状はほぼ同じ製品がほとんどだ。そうなっている理由は、当然量産した方が安価になるからなのだが、単純なコスト削減とはちょっと違う側面がある。
デザインにこだわった製品を作るにはコストがかかる。精度の高い加工のボディを作る場合、当然そうでない場合より高度な加工技術が必要になり、コストは上がる傾向にある。だが、製造する数が「非常に多い」とすればどうだろう? 加工に必要な技術・製造機械にかかるコストは希釈され、1台あたりのコストは大幅に下がる。
アップルは、社内に優秀なデザインチームを抱えている。だが、デザインチームは大手ならどこも持っているし、外部にも優秀なデザイナーはいる。重要なのは、彼らが考えたデザインをいかに「スポイルすることなく商品へ落とし込めるか」だ。そこには、製造コスト・技術の限界との戦いがある。
アップルが品種を減らすのはこのためだ。少品種大量生産を基礎とし、できるだけデザインの良い製品を低いコストで生産できるよう工夫している。同社製品が、同価格帯の他社製品に比べ「デザインが良い」と言われるのは、製造の段階でそうなるようシステム化されているからである。
とはいえ、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください