2012年08月15日
しかし、レギュラー唯一の和歌山県出身で、やさしい性格のようだ。茫洋たる太平洋の黒潮に育まれたためだろうか。西谷浩一監督は、田端をこう評する。
「高校生に見えないようなオッチャン顔ですが、本当に明るく、おおらかな子ですね」
木更津総合(千葉)戦の初回、無死満塁のチャンスで打席がまわってきた。カウント2ボールからの3球目。相手投手が投げ込んだスライダーをフルスイング。この一振りで甲子園がドッと湧いた。
「(歓声は)聞こえましたけど、何でかわかりません」
甲子園のファンは、通算27本塁打のスラッガーを知っている。だが、明らかに力みが見え、最初の打席は空振り三振に終わった。
無理もない。大阪桐蔭は春のセンバツで5試合を戦って頂点に立った。しかし、田端の甲子園はわずか1試合で終わっている。初戦で花巻東(岩手)の193センチの右腕・大谷翔平から左越え2ランを放ったものの、最終打席で死球を受けたためだ。
140キロの直球が右手首を直撃し、相当な痛みがあったはずだ。しかし笑顔で一塁へ走り、9回裏の守りにもついている。根性は、“アニキ”こと阪神の金本知憲を彷彿させる。
試合後も一晩寝れば治ると考えていたが、翌日には青く腫れあがり、病院へ行った。手首を支える重要な骨が折れており、少しでもずれていれば手術しなければならなかった状態だったという。
「結構ヤバかったみたいっス」
と、田端は他人事のようにいう。
病院でギブスを巻き、寮へ戻ると仲間に宣言した。
「次の試合、オレ出るで」
「無理やろう」
「いや、明日になったら治ってるかもしれん」
「治らへん、治らへん」
西谷監督から「ケガしてもやれることあるぞ」と言葉をかけられると、翌日には
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