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かんぽ報道問題で露呈した経営委員会の見識不足

ガバナンス問題を理由とした日本郵政グループに対するNHKの謝罪は公平さ欠く

川本裕司 朝日新聞記者

参院予算委員会に参考人として出席した(左から)日本郵政の鈴木康雄副社長、NHK経営委員会の石原進委員長、NHKの上田良一会長=2019年10月15日

 2019年秋に発覚した「クローズアップ現代+」によるかんぽ生命保険の報道をめぐり経営委員会がNHK会長を厳重注意した問題は、日本郵政グループの3社長という大企業トップが経営委員会に抗議すれば放送現場を牽制できるという悪しき前例をつくった。抗議の中心となった元総務事務次官の鈴木康雄日本郵政副社長が次官退任から8年もたっていたのに抗議を受け入れた不可解さとともに、過剰反応した経営委の見識の劣化を示す一件だった。

異例の放送総局長の謝罪

 18年4月にかんぽ生命の不正販売問題を放送した「クロ現」が続編を制作しようとしていた7月、番組のチーフプロデューサーが日本郵政関係者に会った際、「NHK会長は制作に関与していない」と発言したところ、日本郵政は「放送法上、番組制作・編集の最終責任者が会長であることは明らか。ガバナンスが利いていない」と、8月に上田良一NHK会長に抗議書を送った。

 NHKが抗議には応じなかったため、鈴木副社長は9月、経営委員会に回答がないことへの不満を直接伝えた。経営委でコンプライアンス問題を担当する監査委員が調査し、「番組内容に問題はないが、『会長が制作に関与していない』という説明はガバナンス上で問題があった」という結論をまとめ、10月の経営委で上田会長に対して厳重注意した。11月には放送現場トップである放送総局長の木田幸紀専務理事が鈴木副社長を訪れ謝罪した。

 あるNHK幹部は「元総務次官の鈴木氏は飼い犬にかまれた感覚でNHKに圧力をかけたのだろう」と話す。別のNHK幹部は

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