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全米女王、ブレイディ・テネル独占取材──「大阪の観客が力をくれた」

進化し続ける秘密は、「ぼくの目を見て」という振付師の注意

田村明子 ノンフィクションライター、翻訳家

 ニューヨークで、ブノア・リショー氏と新プログラムの振付を行っていたフィギュアスケート全米チャンピオン、ブレイディ・テネルが本サイトの独占取材に応じた。ロシアのティーンエイジャーに注目が集まりがちの中で、安定した演技を見せて上位入賞を続けてきた23歳のベテラン選手である。

撮影用に特別にマスクをはずしてもらいました全米チャンピオンに返り咲いたブレイディ・テネル=撮影・筆者(撮影用に特別にマスクをはずしてもらいました)

 日本から帰国した後、自己隔離を終えて、ニューヨークに到着したばかりだというテネル。数週間前の大阪での国別対抗戦を、こう振り返った。

 「今シーズン、たとえ無観客でも試合に出るのは楽しかったです。でもやはり、会場にお客さんが入っていた国別対抗戦は最高でした。SPの時にお客さんが手拍子をしてくれて、何て楽しいのだろう、と喜びを噛みしめました。過去1年以上、ああいう雰囲気を経験していなかったので、観客の声援を聞いて本当に力をもらったんです」

2度目の全米タイトルを手に

 2020年の春にモントリオール世界選手権がキャンセルになってから、先のことが見えないまま準備をしてきたという。

 「(今季は)どのくらい、どの大会が開催されるのかわからなかったので、何が起きても大丈夫なように準備をしておこうと決めました。(グランプリシリーズの)スケートアメリカが開催されたことは本当に感謝をしているし、全米選手権に出場できたことは嬉しかった。毎朝起きるたびに、それを目標にしていましたので。もちろん、トム(・ザカライセク)が同行できないという、予想外のことは起きたのですが」

 2020年8月、シカゴからコロラドスプリングスに拠点を移し、トム・ザカライセク氏が新コーチに就任。ところがザカライセクコーチは、2021年1月の全米選手権の2週間前、新型コロナウイルスの検査で陽性反応が出て、大会に同行することができなかった。それでもテネルは、カレン・チェン、マライア・ベル、アリサ・リューらのライバルを抑え、3年ぶりに全米タイトルを手にした。

 「氷の上に出て、自分を解放したんです。そして本当に楽しみながら演技をした。元々それが、今シーズンの目標だったのです。日々何が起きるのかわからないので、一瞬一瞬を楽しもうと思っていました。全米選手権では、それができたと思います」

コーチを変えた理由

 ザカライセクコーチへと移ったのは、

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