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TPPは、米国の関心を太平洋に繋ぎ止める

櫻田淳

櫻田淳 東洋学園大学教授

●バラク・H・オバマの「東京演説」から二年後の風景                    

 「私達はまた、この地域の継続的な経済統合が地域諸国全ての労働者、消費者、企業に利益をもたらすと信じています。…米国はまた、広範にわたる締約国が参加し、21世紀の貿易合意に相応しい高い基準を備えた地域合意を形成するという目標をもって、太平洋を超えたパートナーシップ諸国に関与してゆきます」

APEC首脳会議の記念撮影に臨む野田佳彦首相(前列左から3人目)、オバマ米大統領など=ハワイで

 丁度二年前、二〇〇九年十一月十四日、バラク・H・オバマ(米国大統領)が東京で行った演説には、このような一節がある。鎌倉での「抹茶アイスクリームの思い出」に言及し、「米国の最初の太平洋系大統領」としての自己規定を表明したオバマの演説は、日米同盟を「入口」にしたアジア関与の方針を説明するものであった。

 十一月十一日、野田佳彦(内閣総理大臣)は、総理官邸での記者会見の席で、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)への対応に関して、「交渉参加に向けて関係国との協議に入ることにした」と述べた。日本国内での「解釈」が、どのようなものであれ、野田発言がTPP交渉への参加を表明したものであるのは、否定しようがない。野田発言は、オバマが東京演説で示した「太平洋における経済統合」への志向に対して、日本が示した具体的な政策対応という意味合いを持っている。

 この数カ月、TPP交渉参加の是非に絡んで特に民主党内を二分した議論の沸騰は、

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