若林秀樹
2012年04月02日
私も、3月16日、法相に直接面会し、執行の停止継続と、死刑制度に関する国民的な議論の場の設置を要請したばかりであった。今思えば、その時点で既に死刑執行の意思を固め、アリバイ作りなのか、突如としてアムネスティをはじめとする死刑に反対する市民団体と会い始めたのである。
皮肉にも、3月27日、アムネスティは2011年の世界の死刑に関する統計を発表し、日本の19年ぶりの死刑無執行を評価した矢先であった。統計によれば、世界の死刑廃止の潮流は続いており、全世界198カ国中、死刑を廃止した国は前年より2カ国増えて141カ国(71%)、昨年死刑を執行した国は、わずか20カ国、全体の1割程度に過ぎなかった。
それらの国は、中国、イラン、サウジアラビア、イラク、米国、イエメン、北朝鮮等であり、日本は、今回の執行でこれらの国と一緒に名を連ねたことになる。
野田佳彦首相や小川法相は、2009年内閣府世論調査の結果を国民の死刑制度に対する支持と判断し、それを今回の死刑執行の拠り所とした。国民が望んでいるから死刑を執行するというのであれば、政治家は必要ない。
まさに政治理念なき、国民に責任を転嫁する死刑執行である。少数派であっても、困っている人、人権侵害にあっている人たちを救済することが、政治の役割ではないか。この論理でいえば、多数派の意見で少数派の人権侵害を黙認してもいいことになる。ましてや人の命を多数決で奪うことがあってはならない。
死刑執行の拠り所とした世論調査そのものも、設問に問題があり、死刑維持を誘導するものと言わざるをえない。設問と回答率は次の通りだ。
1.どんな場合でも死刑を廃止すべきである。(5.7%)
2.場合によっては、死刑もやむを得ない(85.6%)
3.わからない、一概に言えない(8.6%)
この回答結果をみれば、明確に死刑廃止の考え方を持つ人だけが「1」と答え、条件付きで死刑廃止を望む多くの人は「2」と答えたであろう。実際に、「2」の「死刑支持」と回答した人の34%が、「状況が変われば、将来的には死刑を廃止してもよい」と答えているのである。よくぞ、これで
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