2021年07月26日
始まったばかりの民主党政権下で特捜検察は2009~2010年、当時の鳩山由紀夫首相(民主党代表)と小沢一郎・民主党幹事長を対象とする事件捜査を進めました。検察は結局、国務大臣の不訴追の特典を定めた憲法の規定を意識して鳩山首相の取り調べを見送り、また、秘書らとの共謀を立証するに足りる証拠がないとして小沢幹事長も不起訴にしました。しかし、鳩山氏は2010年6月、「政治とカネ」の問題を一因に挙げて首相と民主党代表を退陣し、小沢氏は2011年1月、検察審査会の議決に基づいて指定弁護士によって起訴されました(のちに無罪判決が確定)。21日のオンライン記者サロンでは、民主党政権発足時の二大巨頭、鳩山氏と小沢氏に対する特捜検察の捜査から議論を始めました。
7月21日のオンライン記者サロンで紹介した論座AJの過去記事
2010年7月21日
検察、憲法の大臣不訴追特典を意識
昨年暮れの鳩山氏の取り調べ見送りで
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2710071900009.html
鳩山前首相本人の量的制限違反容疑と相続税法違反容疑
憲法の不訴追特典が外れた今こそ検察は捜査でけじめを
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2710071900003.html
小沢一郎氏「不起訴不当」、東京第一検察審査会議決要旨の全文
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2710071600012.html
2010年10月11日
小沢一郎議員 記事一覧
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2710101000002.html
2011年6月16日
水谷建設証言が暴いた公共事業利権
情報開示義務違反型捜査の威力とリスク
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2711060800009.html
2010年8月30日
総理大臣の訴追はできるか? 小沢氏の代表選出馬で憲法論議
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2710083000001.html
2010年8月21日
政治資金不正に有権者代表訴訟の制度導入を 検察頼みだけでない国民参加を
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2710082000013.html
AJがスタートして2カ月後の2010年9月、大阪地検特捜部で証拠改ざん事件が発覚しました。東京地検特捜部でもその後、事実と異なる捜査報告書を作成した問題が明らかとなり、2012年に担当検事が懲戒処分を受けて辞職しました。これらは検察組織を震撼させ、以後、特捜検察は萎縮の時代に入ります。
2010年10月4日
《最高検記者会見一問一答詳録》前特捜部長逮捕で次長検事がおわび
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2710100200006.html
2012年1月31日
検察は「うそ捜査報告書」の捜査・検証を急げ
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2712011600008.html
2012年12月には、民主党に代わって自民党が政権与党に返り咲き、安倍内閣が発足しました。安倍内閣は2020年9月まで続き、安倍首相の後任となる菅義偉氏が官房長官としてこれを支えました。
他方、2010年2月から2019年12月までの10年近くにわたって、特捜検察による国会議員の逮捕・訴追は途絶え、これは結果的に、戦後最長の「空白」期となりました。
捜査を尽くし、訴追するべきなのに、検察が敢えてそれを避けた事件があったのではないか、との疑念が、国民の間に膨らんでいきました。
2019年6月24日
東芝粉飾決算の一部時効、検察は監視委の告発を制約していいのか
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2719062300001.html
2018年6月4日
検察は財務省背任容疑にどう迫ったか、なぜ不起訴にしたか
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2718060400001.html
安倍・菅政権による検察人事への介入が始まったのは、検察の萎縮が極まり、国民に疑念がくすぶる2016年9月のことでした。
法務・検察当局は、林真琴刑事局長を法務事務次官に昇格させ、検事総長への昇進ルートに乗せるとの意向でまとまっていましたが、安倍・菅内閣はこれを受け入れず、代わりに官房長だった黒川弘務氏を次官に就任させ、やがて東京高検検事長にしました。以下の記事リストのとおり、村山さんはほぼリアルタイムでこの経緯を克明に報じていきました。
2016年11月22日
官邸の注文で覆った法務事務次官人事 検察独立の「結界」は破れたか
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2716111900001.html
2017年9月17日
法務・検察人事に再び「介入」した官邸 高まる緊張
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2717091200002.html
2018年1月18日
上川法相が林刑事局長の次官昇格を拒否か、検事総長人事は?
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2718011200001.html
2019年1月24日
「次の検事総長は黒川氏」で決まりなのか、検察の論理は
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2719012400001.html
2020年1月には、検事総長を除く検察官について63歳で退官すると定めた検察庁法について、安倍・菅政権はその解釈を突如として変更し、黒川検事長の勤務の延長を閣議で決定。さらに、同年3月には、検事総長、検事長、次長検事の勤務延長を内閣の裁量で可能にする法案を閣議決定して、国会に提出し、5月にそれを成立させようとしました。
2020年1月31日
稲田検事総長が退官拒絶、後任含みで黒川氏に異例の定年延長
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2720013100001.html
2020年3月30日
黒川検事長の定年延長を事前に承認した稲田検事総長の説明責任は?
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2720032800001.html
そのときでした。ツイッター上で「#検察庁法改正案に抗議します」との投稿があふれるように増え、内閣支持率が目に見えて低下したのです。政府は、検察庁法改定の断念に追い込まれました。その上、黒川検事長は賭け麻雀を暴露され、検事総長になることなく辞任し、代わりに、林氏が検事総長に就任しました。検察首脳人事をめぐる安倍内閣の2つの試みはいずれも頓挫したのです。安倍氏がその年の8月28日に首相辞任を表明するまで、内閣支持率が回復することはありませんでした。
2020年6月10日
稲田検事総長と辻法務事務次官に元特捜部長が再び辞職勧告
政治と検察で対応に誤り
検事長定年延長・検察庁法改正の迷走劇を元東京地検特捜部長が斬る
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2720060700001.html
2020年12月21日
検察人事への政治介入をはね返した護送船団時代と受け入れたこの4年の違い
「法と経済のジャーナル Asahi Judiciary」10周年記念ウェビナー①
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2720121600001.html
2020年12月25日
官邸の意向に沿う私的な政治捜査と本当の「国策捜査」、検察幹部の「起訴基準」
「法と経済のジャーナル Asahi Judiciary」10周年記念ウェビナー②
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2720122200001.html
2020年12月29日
ロッキード事件、バブル経済事件、福島原発事故と検察
「法と経済のジャーナル Asahi Judiciary」10周年記念ウェビナー③
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2720122700001.html
2021年1月2日
検察に対する民主的統制どうする? 情報開示が足りない最近の検察
「法と経済のジャーナル Asahi Judiciary」10周年記念ウェビナー④
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2720123000001.html
検察は職責上、政治からの独立性を要請されています。一方で、政府の一機関として検察首脳の人事権は内閣に握られており、検察は内閣を通じて国民の民主的統制に服する仕組みとなっています。このように単純には一刀両断にできない、微妙なバランスの問題にも、論座AJオンライン記者サロンの議論は及びました。
2020年12月31日
「桜を見る会」事件で首相の犯罪嫌疑を捜査した検察に続く正念場
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2720122800001.html
2021年3月12日
安倍前首相秘書に公民権停止3年、略式命令の書面開示
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2721031200003.html
2021年2月6日
1年で国会議員4人を起訴した検察 逮捕・受託にこだわらず自然体で
https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2721020500001.html
菅政権発足後、学術会議会員人事への政権の介入が大きな問題となり、NHK人事への関わりも取り沙汰されています。これは、法務・検察人事への政権の介入と同根の問題です。
2020年10月16日
菅首相就任1カ月 学術会議の任命拒否で露呈した「総論なき各論政権」の限界
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020101600004.html
2019年3月3日
中島岳志の「自民党を読む」(7)菅義偉
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019030100002.html
2020年10月8日
政治による人事介入の危うさ
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020100600003.html
2021年3月19日
いまNHKで起きていること~Nスぺ収録2日前の見送り、看板キャスター交代
https://webronza.asahi.com/national/articles/2021031900001.html
オンライン記者サロンではこうした経緯と論点を俯瞰的に取り上げて、今後への教訓を探り、視聴者からの疑問に答えました。
論座(全ジャンルパック)もしくは朝日新聞デジタル(プレミアムコース、ダブルコース)の購読者は以下のリンク先から、オンライン記者サロンで用いたパワーポイントのスライドのPDFファイルをダウンロードすることができます。
メーンのスライドのPDF
検察庁法などの規定を抜粋したスライドのPDF
検察官の定年と2020年の検察庁法改定案の内容に関するスライドのPDF
学術会議やNHKの人事に関する論座の記事のスライドPDF
論座AJオンライン記者サロンは今後も来年(2022年)3月まで月1回のペースで開いていく予定です。第2回は8月18日(水)午後7時からの開催を予定しています。参加のお申し込みはこちらのサイトで:https://que.digital.asahi.com/question/11005249
以下の動画は、7月21日夜のオンライン記者サロンの後半72分で
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